5.茶葉の漬物ミィエン(2013年12月8日)

 お茶は普通飲み物であるが、タイ北部には茶葉の漬物があり,飲むのではなくてこれを食べてちょっと一服する風習がある。
人類がお茶を煎じて飲むことを発明する以前には茶葉の漬物を食べていたのではないかという説もある。
タイ北部は茶樹の原産地である中国雲南省に近いので、大昔の名残が今も続いているのかもしれない。
 ミィエンの色は茶色がかった緑色をしており、いわゆる「糖蜜色」ではない。しかし、前回紹介した「プーアル茶」と同じく微生物発酵茶であるので、その関連で紹介することにしたい。
 1993年3月20日に私はカセサート大学の先生の案内で、チェンマイ県ドイサキット郡パミィエン村にミィエンの調査に行った。
”パ”とはその地方の方言で”森”を意味し、”ミィエン”とは”茶”のことであるので、”パミィエン村”とは”茶の森村”ということになろう。
 現地の人の話では3~4年前に日本の撮影隊がこの地を訪れミィエンの取材をしていったという。
これはたぶんNHK取材班で、その結果はNHKスペシャル”人間は何を食べてきたか-アジア・太平洋編-”で放映されたものと思われる。
また同取材班により下記の書籍が出版されている。

 人間は何を食べてきたかアジア・太平洋編(上) 麺、イモ、茶.日本放送協会.NHK取材班、奥村彪生、西村喜一、松下智.(1990)

目次
(1) 茶摘み
(2) 生葉を蒸す
(3) 発酵
(4) 製品化
(5) ミィエンの食べ方


(1) 茶摘み


  茶摘みは年に4回、 1回目は4月~5月、2回目は6月~7月、3回目は8月から10月、4回目は11月~12月である。
私たちが訪問したときは茶摘みの時期ではなかったが特別に実演してもらった。


(2)生葉を蒸す

  摘み採られた生葉は、その夜のうちに蒸さなければならない。この操作は非常に重要でミィエンの品質、特に色に大きな影響を与える。
茶葉に存在するカテキン類は生鮮時には細胞の液胞内にあって安定しているが、しおれたり、傷ついたりして液胞から流出すると酸化酵素(ポリフェノールオキシダーゼ*)が酸化されてしまう。カテキンは未酸化の状態では淡黄色であるが酸化されると赤色となり、ミィエンは黒ずんでしまう。黒ずんだ製品は好まれないので蒸すことにより酵素を失活させるのである。
 蒸し器は⑦のような物を使い2時間以上蒸されるとのことであった。

*ポリフェノールオキシダーゼについては「ワンダムおじさんの糖蜜色研究、3.1 サトウキビジュースの色とポリフェノール」を 参照のこと。


(3) 発酵



  蒸されたダム(茶葉の束)はプラスチックシート(昔はバナナの葉)を敷いたコンクリート製のタンクにすきまのないように整然と並べる。
タンクの表面は酸素が入らないようにバナナの葉またはプラスチックシートで覆い、さらに重石をのせる。
  ミィエンの発酵は特にスターターは添加しないものの、乳酸菌による嫌気的発酵である。酸素が混入するとカビが生えてくるので酸素の混入防止が最も重要であるとのこと。
 3ヶ月ほど漬け込んだ物はMiang Fardと呼ばれ渋みが強い。4ヶ月から12ヶ月漬け込んだ物は酸味が強くMiang Prewと呼ばれている。
Miang Prewを作るには、酸素を完全に除くためにタンクに水を充填しガムとガムの隙間を埋めてやる必要がある。


(4) 製品化



(5) ミィエンの食べ方


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