12.鉄錆(2014年2月9日)

 2011年にタイが大洪水に見舞われ、工場の敷地への浸水を防ぐために悪戦苦闘したことは自著にも記載した通りである。(「ワンダムおじさんの糖蜜色研究」4.6 タイの大洪水のとき土の色について考えた)
 さて、洪水対策として工場の境界線をパトロールしていたときに、写真1のような錆びた廃屋を見つけた。
私はこの糖蜜色の錆をとても美しく感じたのである。
一般的には錆を美しいと感じる人は少ないと思う。むしろ「汚い」と思うのではないだろうか。
私も若いときはそうだった。錆は朽ち果てていく物でしかなかった。
 工場の設備管理においては錆は大敵である。錆びない材質の設備の選定や、その対策に多くの時間を費やしたこともある。
しかし、年を重ね、自分もいずれ朽ち果てるのが見えてくると、錆の色に美しさを感じるようになった。
 「錆」という写真集がある。(大前正則 編集. 美術出版社、2007年)
この本の最初に、作家の東理夫氏が「夕陽色の錆」という文を書かれている。その結びの文章に感動したので以下に引用する。
 「この世にあるものはすべて、生まれたその瞬間から酸化への道を歩む宿命にある。生き物だって、無機物だって、何一つ例外ではない。この世に生を享けた時から、すべてのものは朽ちていく。
 年を経て錆びて朽ちはじめたものたちは、ピークを過ぎ、衰えを見せはじめたもの独特の美しさを放っている。錆の美しさは、滅びの美しさに共通するところがあるようだ。だからだろうか、夕陽の中に錆の色を見つけて美しいと感じるのは。」





 日が過ぎるにつれて、埃をかぶって錆の色があせていく。
11月,12月はタイの乾季なので雨は降らないからだ。洪水は8月~10月にはるか上流で降った雨によってもたらされる。

 以下にいくつかの錆をそのRGBとともに紹介しよう。





 鉄道のレールは列車が通るのでピカピカである。
しかし、線路の枕木や砂利は錆色に染まっている。レールから少しづつ剥がれた鉄の超微粒子が錆びた物だと思う。

コレクションリストに戻る