17.奈良(2014年3月9日)

  私が「糖蜜色コレクション」を始めようと思いついたのは2006年に奈良市を観光したときからである。
2006年5月12日の日記に私は次のように記載している。
「昨日、法隆寺、中宮寺、慈光院、薬師寺、唐招提寺などを観光した。どの寺も長い長い歴史を経た木造建築であった。その古い木材は堂々たる糖蜜色であった。まわりの木々は糖蜜色の幹と枝に新緑から初夏に変わろうとする今の季節、緑の葉が茂っている。糖蜜色と緑色のバランスが映えている。特に、朝まで雨が降り続いていただけに、雨上がりの風景はまた格別であった。
  このような糖蜜色の奈良を歩きながら、私は糖蜜色の風景や物品をデジタルカメラで撮影しコレクションしてみようと思い立ったのである。」

(1)糖蜜色の構築物
 奈良市では古都の景観を壊さないように建築物の設計に配慮すべき点が条例で決められているらしい。
その色彩については以下のようになっている。
「奇抜な色や強く反射するものは避け、グレー、ベージュ、アイボリー、ブラウン等を基調とした、地域の景観と調和した色彩となるように努める。」
だから写真1に示すような落ち着いた糖蜜色の構築物がそこかしこに存在するのだ。





 写真2のようにゴミ箱も糖蜜色であった。この写真を整理していて初めて気づいたのだが、子供たちの半ズボンやスカートも糖蜜色であったのにはおそれいった。




(2)奈良の大仏様

 もともとはブロンズ(銅と錫の合金)に金メッキ(水銀に金を溶かし塗りつけた後、水銀を加熱蒸発する方法)したもので黄金色であった。
今は金メッキがはがれブロンズ色をしている。(錫の含有率が低いと10円硬貨のような赤銅色をしており、錫の含有率を高めるにつれ黄金色から白銀色となる。)ブロンズは代表的な糖蜜色の仲間だ。



(3)法隆寺中門の金剛力士




(4)古い木材の色
 木材は光によって変色し、濃褐色すなわち糖蜜色になっていく。世界最古の木造建築は美しい糖蜜色だ。







(5)樹皮の色
  針葉樹の外樹皮は一般に褐色または黒褐色(すなわち糖蜜色)であるが、これは外樹皮に含まれるタンニンが紫外線や酸素によって酸化されて高分子化したものと考えられる。外皮中のタンニンは自らが酸化されることによって樹木内部を護っている。



(6)鹿の毛色と糞の色
  哺乳類の毛色は真正メラニン(黒~焦げ茶色)とフェオメラニン(赤茶~黄色)の2種の色素で決まる。
鹿の糞はチョコレートのような褐色をしている。土産物店には「鹿の糞チョコレート」なるものが売られていた。
糞の色の大部分は腸管から排泄された胆汁色素であるビリルビン(黄色)もしくはそのその誘導体であるウロブリン(茶褐色)に由来する。




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