21..パン (2014年4月28日)

焼きたてのパンの味、香りは最高だ。私はタイにあった三つ目の研究室で土曜日、日曜日そして月曜日の朝はいつもパンを食べていた。私の著書から三つ目の研究室について記載した部分を引用すると次のようである。

「ワンダムおじさんの糖蜜色研究。1.4 ワンダムおじさんの研究室と研究道具.
  三つ目は首都バンコクにある一部屋のサービスアパートである。
  最初は妻子3人とともに広いアパートに住んでいたのであるが、20年もいると子供は成長し日本に帰国、妻も『もうタイは飽きた。』といって日本に帰った。
  ワンダムおじさんのサービスアパートのビルにはスーパーマーケットがあり、日本食のレストランがあり、本屋があり、理容店、さらには日本語の通じる歯医者さんまでがあった。そこでおじさんは土曜日と日曜日はこの一室に閉じこもり、実験三昧の生活を送った。
  部屋には小さな調理台がそなえられているので、ものを切り刻んだり煮たり焼いたりする実験には最適であった。
  実験器具は同じビルにあるスーパーマーケットからステンレス製容器やプラスチック容器を容易に調達できた。」
 さて、このスーパーマケットには日本のヤマザキパンのタイ現地法人の直営ベーカリーがあり、そこで焼きたてパンを買うことができた。私にとってタイのパンの味はもう一つ満足できなかった。焼き色の薄い白っぽいパンが主流だったからだ。私はワンダムおじさんの肌のような糖蜜色に焼けたパンが好きなのだ。そのあんパン(写真1.上)の美味なること。日本でもなかなかこれほどのパンにはお目にかかれないと思う。
私は製パン用酵母の製造に従事していたこともあり、パンの味にはうるさい方だ。

 

 1994年の5月に1回目のタイ駐在(7年と数ヶ月)が終わり日本に帰国したら静岡県の大仁町にある旭化成食品事業部の研究所に配属された。大仁の地は旭化成と合併する前は東洋醸造(株)の本拠地でお酒、パン酵母、医薬品など発酵技術が江戸時代から営々と受け継がれていた。
その研究室で私は3ヶ月間、パンの作り方について厳しい研修を受けたのである。良いパン酵母をつくるためには、パンの作り方を知らなければならなかったからである。
もちろん、3ヶ月程度ではパン作りの腕前は何年も研鑽されているパン技術者の方々にはおよぶべきもなかったが、少なくともパン作りの理屈についてはそれなりに知識をえることができた。
 研修時の参考書は「竹谷光司、新しい製パン基礎知識」であった。
表1はその本に記載されている食パンのつくり方である。パン作りの専門用語が使われてるが、ここではその説明は割愛する。
 言いたいことは、パン表皮の焼き色は「焼成工程」でできることである。



 表2には世界のパンの表皮のRGB値を示す。
これは「料理と食シリーズ⑧パン料理、パン菓子.旭屋出版(1994)」の「世界のパン図鑑」という記事にあるパンの写真からRGBを求めたものである。





図1と図2はパン表皮のRとGおよびBの関係を糖蜜のそれとともにプロットしたものである。
図1のグループ(パン①)は糖蜜とほとんど同じ直線上にあり、このグループの表皮は糖蜜色そのものであると言える。
図2のグループ(パン②)は糖蜜のプロットとはRの低いところでは下側にRの高いところでは上側にずれており、真の糖蜜色ではない。
表3にパン①とパン②に分類したパンの名称を示した。







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