63. ガンガン石とタブノキ 2015年6月2日

  宮崎県延岡市に自宅のすぐ近くに「ガンガン石」と言われる巨石がある。
地元では古来より畏敬の念を持って親しまれており、毎年4月か5月には「ガンガン石祭り」が行われる。(写真1. 写真2)




 ガンガン石のそばにはその由来の説明板がある。(写真3)

 
 私はこの地の出身者ではないので、地元の長老の方にガンガン石のことを色々教えていただいている。
長老の考えでは、古代にはこの石は波打ち際にあり、舟を繋ぐのに使われていたのではないかということだ。
長老が子供の頃は石の近くに水路が流れ、そこで魚をとったり、相撲をとったりして遊んだものだという。
今は水路は道路の下を流れている。
 そのまま、水路があればさぞかし風情があったのにと思うのだが、世の中の変化にはついていけない。
ガンガン石には一本のタブノキが茂っていて、その木陰は南国宮崎の夏には、ほんとうに涼しかったそうな。

 写真4に新芽が萌え立つタブノキの全景を示す。
 写真5はタブノキの下から空を見上げたところである。


 私はガンガン石にある木が「タブノキ」であることをつい最近まで知らなかったが、調べてみるとタブノキは日本の草木についての記述では最も古い樹木の一つだそうである。
なにしろ「魏志倭人伝」に記載されているのである。
(ものと人間の文化史165、タブノキ、山形健介、法政大学出版局 2014年)

 タブノキは照葉樹林を形成する樹木の一つで、宮崎県の綾町の照葉樹林にも多く生育しているとのことである。
綾町の照葉樹林文化館には綾の樹林に生育する樹木の標本が展示されている。(写真6)
もちろん、タブノキもありその材の色は糖蜜色であった。(図1)




 古来よりタブノキは日本列島の人々に利用されてきた。(表1)
 私にとっては樹皮を褐色(糖蜜色)染料として利用してきたこと、種々の薬理作用があることに興味をそそられる。


 ガンガン石とそこにあるタブノキを見ていると、遠い昔にこの地で生きていた人々のことを想う。
ここで海を見ながら将来を話した恋人たちもいただろう。
 ここにいるとスピリチャルなものを感じるのは事実である。

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