533. カボチャ抽出残渣懸濁液の放置 2023年5月31日

 本節は第468節「カボチャ残渣の水添加放置」の続きである。
今までの経緯の概略は以下の通りである。
①2018年6月13日にカボチャの種をまき、その成長を記録した。(第251節
②2018年10月4日にカボチャの実を収穫し、その放置経過を記録した。(第302節
③放置中にカビなどの微生物に可食部分を分解され、残ったカボチャ残渣に水を添加して室内に放置し、その経過を記録した。
 放置開始が2019年9月22日、放置終了が2022年5月23日である。(第468節
④③の放置終了時の煮沸抽出して得た、抽出残渣と抽出沪液を乾燥し、その乾燥物を水に懸濁して室内の窓際に放置したのが
 今回の実験である。
 懸濁液の放置開始時の状態を写真1に示した。



 写真2には放置中の外観経過を示した。
懸濁液はすぐに沈降物が沈むが、一週間に一度撹拌してpHの測定を行った。
懸濁液を入れた広口瓶は蓋をしていないので、水分の蒸発は多い。
重量減少分を1週間に一度、水道水を添加して補充した。


 表1には沈降物のRGB変化を示し、G/R、B/R比率を計算した。


 図1は沈降物のG/R変化である。
 9月中旬よりG/Rが上昇しはじめ、抽出残渣懸濁液は11月に1.0を超え、緑色を帯びるようになった。
 抽出沪液懸濁液もG/Rは上昇したが1.0を超えることはなかった。
 図2は沈降物のB/R変化である。
 残渣、沪液とも経時的に上昇し1.0に近づいた。
 B/Rの上昇は緑色のシアノバクテリアの増殖によるものである。



 図3は水添加後の重量経過、図4は累積水添加量である。
 累積水添加量はG/Rの上昇前である9月中旬までは残渣と沪液で差がないが、G/Rの上昇が始まってからは沪液>残渣となった。
 これは残渣の方がシアノバクテリアの増殖が旺盛で、空気中の炭酸ガスを多く固定したためその分重量減少が少なくなったためと考えられる。


図5にpHの経過を示した。
pHは残渣、沪液ともアルカリ性で放置直後に急激に低下し、その後ゆっくりと低下した。
pHは常に沪液>残渣であった。

図6に悪臭強度の経過を示した。
放置後しばらくすると強い悪臭(腐敗臭)が発生した。
悪臭の発生はG/Rが上昇を始める9月中旬移行停止した。
この時点で腐敗菌の栄養源となる有機物が葛藤し、そのような有機物を必要としないシアノバクテリアが優勢になったと考えられる。



最終放置液は沪過して沪過残渣と沪液に分離した。
その様子を写真3に示した。


写真3の沪液を遠心分離し(6,000rpm*10分)、遠心上清と沈降物を得た。
その様子を写真4に示した。



 写真6は沪液を乾燥したときの状態である。
 乾燥固形分は抽出残渣が0.82%、抽出沪液が2.88%であった。
 

図7、図8に写真4で得た遠心上清の紫外可視吸収スペクトルを示した。
抽出残渣は210nm付近に抽出残渣は230nm付近にピークが認められた。





図9に抽出沪液/抽出残渣の吸光度比を固形分比とともに示した。
200nmの吸光度比はほぼ1.0であるが、210nmから290nmにかけて急上昇し、それより長波長ではほぼ一定となり、
固形分比率に近接する。
図8に示すように290nmより長波長では一般吸収を示しており、フミン酸様の高分子物質が有機物の主成分ではないかと
考えられる。フミン酸様物質のカリウム塩が固形分の本体ではないであるうか。





写真7,8,9,10,11,12は最終放置液の顕微鏡画像である。
球状およびスパイラル状のシアノバクテリアが観察できた。






コレクションリストに戻る