16.サトウキビのフェノール化合物 2014年5月3日

(1)はじめに

 サトウキビ由来物質の抗酸化性作用は主としてフェノール化合物によるものである。
 「ワンダムおじさんの糖蜜色研究:3.1 サトウキビジュースの色とポリフェノール」においてフェノール化合物のサトウキビや糖蜜での存在について記載したが、最近の情報についてはフォローしきれていなかった。
ここでは2005年~2011年のインターネット上で入手できる学術論文に発表されたサトウキビ由来のフェノール化合物を主として化学構造で分類してみた。
化学構造式は論文に掲載されているものはそのものをコピー(一部改変したものもある)させていただき、掲載されていないものはインターネット上で検索して入手したものを使用させていただいた。
 化学構造式の分類は写真1のように構造式を印刷した紙片を段ボール紙に貼り付けておこなった。
生きているサトウキビとフェノール類の構造式を並べて、今もサトウキビの中で活動しているこのすばらしい物質群にしばし思いをはせた。
 



(2)サトウキビ由来のフェノール化合物に関する文献の一覧



(3)サトウキビフェノール化合物のアルファベット順での分類

 異なる文献に出てきた、同じ化合物をひとつにまとめて、化合物NOをつける作業を行った。



(4)化学構造式
 








(5)サトウキビフェノール化合物の構造による分類と分布

 以下の条件で分類を行った。

①芳香環の数がいくつあるか
②糖と結合しているかどうか(配糖体かどうか)
③末端ベンゼン環に結合したメトキシ基(-OCH3)の数はいくつか




 配糖体について芳香環数とメトキシ基の結合数で化合物の出現頻度を見てみると(図7) 芳香環数が1つのときはメトキシ基2個の頻度が高くなり、芳香環が2つのときはメトキシ基1個の頻度が高く、芳香環が3つになるとメトキシ基0個の頻度が高くなる。
この理由についてはフェノール化合物がサトウキビ内で存在できる親水性/親油性バランスが関係しているのかもしれない。
親水性の大きさは 糖>フェノール性水酸基>メトキシ基>芳香環 であるので、芳香環数が増加すると親水性は低下する。またメトキシ基の増加を親水性を低下させる。従って親水性/親油性バランスを保つために芳香環が増加するとメトキシ基が減少するというのが私の仮説である。






(6)慣用名のあるフェノール化合物

 サトウキビに存在するフェノール化合物はサトウキビだけに存在するのではなく、植物一般に存在するものである。特に慣用名のある化合物はその名称が発見された植物名に由来することが多い。





(7)おわりに

 植物の基本骨格はリグニンでできている。リグニンはポリフェノールの高分子である。(「ワンダムおじさんの糖蜜色研究:4.5 樹木の葉と樹皮の色 p201)
植物はポリフェノールを生合成するのが得意であり、ポリフェノールが植物体内で種々の機能をもっていることも容易に想像できる。
一方、動物の基本骨格はコラーゲンでできている。コラーゲンはペプチドの高分子である。(ワンダムおじさんの糖蜜色研究:5.4 ミトコンドリアがつくる活性酸素 p273)
動物はペプチドを生合成するのが得意であり、ペプチドはホルモンなど動物体内で重要な機能を持っている。
 田中隆治氏は「植物界においてはポリフェノール類が動物界におけるペプチドと同様の働きをもっているのではないか」という推論を述べられている。
(田中隆治..ヒトはなぜ茶を愛飲するのか.ビオストリー Vol2. 2004)
また植物のPPO(ポリフェノールオキシダーゼ)がプロテアーゼ活性を持っているという桑原らの論文も紹介されている。(Tomohiko Kuwabara(1995) FEBS Letters,371:195-198)
フェノール化合物は植物に普遍的に存在するが、その含有量と組成は植物によって異なっている。
私はサトウキビ由来のポリフェノール含有抽出物が、特別に有効な含有量と組成をもっていると信じて、趣味の研究を続けていきたいと思う。

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