40.PPOを失活させたバナナ果肉ペーストの変色 2014年10月7日

(1)はじめに
 
  バナナ果肉を電子レンジで500W*3分加熱するとバナナのポリフェノールオキシダーゼ(PPO)は失活し、水が十分に存在するスラリーの放置では褐変しない。(34.バナナ果肉の褐変とその防止)
 また、バナナ皮を煮沸してPPOを失活させても、水分が蒸発する条件で放置すると褐変がおこる。(36.バナナ皮切片放置条件と褐変速度)
 それでは、PPOを失活させたバナナ果肉のペーストを水分が蒸発する条件で放置したらどうなるであろうか?
 その場合、褐変がおこるとしたらメイラード反応によるものかもしれない。
 そこで今回はメイラード反応の原料になる①グルコース(還元糖) ②グルタミン酸ナトリウム:MSG(アミノ酸)、生理的温度でメイラード反応を阻害する③アミノグアニジン塩酸塩を添加して比較してみた。



(2)方法
 
 ①写真1のようにPPOを失活させたバナナペーストを調製し、各10gずつシャーレに採取した。
 
 ②このシャーレに以下の水溶液10mlを添加し、良く混合し、シャーレの蓋をせずに36℃のインキュベーターに入れ、重量測定と写真撮影を行った。
   1)水道水
   2)0.2%グルコース
   3)0.2%MSG
   4)0.2%アミノグアニジン


(3)写真撮影経過

 写真2に示すように、いずれの条件でも褐変が起こった。

 
 
 


(4)重量変化

 相対重量の経過は条件により異なっていた。(図1)
 相対重量の減少速度は アミノグアニジン>MSG>>グルコース>水の順であった。(図2)
 18日後の最終到達重量は MSG<アミノグアニジン<グルコース=水の順に小さくなった。(図3)


 
 
 


(5) T値(R+G+B)の変化
 
 写真よりRGB値を求め、その合計のT値の変化を図4にプロットした。
 またその近似曲線(2次関数)を図5に比較した。
 
 

 T値の低下速度が速いのは アミノグアニジン>グルコース>水>MSGの順であった。
 生理的条件下でメイラード反応を阻害するアミノグアニジンが最も褐変速度が速かったのは予想外であった。


(6)相対重量と近似曲線のT値の関係(図6)

 いずれも、相対重量の低下とともにT値が減少(褐変)した。
 水、グルコース、アミノグアニジン添加は同じ傾向をしましたが、MSG添加だけは挙動が異なっていた。
 
 


(7)3日間平均RGBの比較

 0-3日のRGBは各条件で大きくは変わらないが、 3-6日および6-9日で差がつき、アミノグアニジンとグルコースのRGBが小さくなる。
9-12日で差は小さくなった。(図7)

 

 12日以後は水はRGBともに上昇に転じ、アミノグアニジンはRのみが上昇に転じた。グルコースとMSGは上昇しなかった。
 
 


(8) 最終乾燥物の状態

 MSG添加物はパサパサしていて掻き取り回収率が最も高かった。
 グルコース添加物、アミノグアニジン添加物は粘りけがあり回収率は低く、水はその中間であった。

 


(9)おわりに

 今回得られた結果の理由をうまく説明することはできない。(例えばMSGを添加するとなぜ重量低下が早くなり、そのわりにT値が高いことなど)
脱水したバナナ果肉はメイラード反応が起こらなくてもこのような色をしているのかもしれないとも考えたが、凍結乾燥バナナはこんな褐色をしていないのでそのようなことはないだろう。

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