7. 黒糖製造条件

 2013年サトウキビ生育経過の(5)刈り取り前後において,11月26日に14本、12月1日に64本のサトウキビを刈り取った。これらのサトウキビを使用して台所のプロパンガスコンロと鍋を使って黒糖を製造する条件の検討を行った。

目次

(1)刈り取った茎の洗浄度
(2)煮詰め終了点
(3)ジュースの濃縮倍率とRGB値
(4)製造条件検討結果のまとめ


(1) 刈り取った茎の洗浄度

  写真1でNo.1は皮を完全に除去したもの、 No.2は皮の表面を削り取ったもの、No.3は皮の表面をタワシを使って洗浄したもの、No.4は刈り取ったまま何の処理もしていないものである。
刈り取っただけのサトウキビの表面には白い蝋が付着している。

 写真2はそれぞれの茎をしぼったときのジュースである。
ジュース100mlのRGB値を比較するとNo.1が最も明るく、ついでNo.2、 No.3とNo.4は同じくらいであった。
遠心分離したときの沈殿物量は見かけ上はほとんど差はなく、皮を完全に除去しても発生した。
ジュースの味はいずれも良好であったが、No.4は舌に異物感が残った。No.4は安全衛生上の観点からも採用できず、No.1とNo.2は手間がかかるのでNo.3を採用することにした。
表面の蝋は除去しておかないと搾り機のローラーに付着して洗浄が大変であるし、黒糖がパサパサにならない(ネバリけの強い製品になる)ので蝋の除去は重要であると考えた。



(2) 煮詰め終了点

 6500gのジュースをステンレス製の鍋にいれプロパンガスコンロで加熱して煮沸濃縮したときの液温の変化およびBrix%の変化を図1に示した。
加熱開始後0.5hrで温度は100℃に達し沸騰する。その後2.5hrまではゆっくりと温度は102℃まで上昇していく。この期間にBrixは約3倍になる。
その後、温度は急速に120℃まで上昇する。手持ちのBrix計では50%までしか測定できないが、グラフより外挿すればBrixは100%に達し、蒸発すべき水はほとんどなくなっている。
125℃以上になると焦げ臭が発生した。
 写真3には濃縮倍数と濃縮ジュースを常温まで冷却したときの流動性を示した。このときの実験では絞ったジュースをまず煮沸してから濾過したため、濾過前、濾過後とも濃縮倍数は1.2となっている。
流動性は濃縮倍数4以上で小さくなり、濃縮倍数5でなくなる。 濃縮前のBrixは17.5%であったから5倍すれば87.5%となる。







 種々の温度の濃縮ジュースを冷水に滴下したときの様子を写真5に示した。
118℃では濃縮ジュースは水に溶解してしまうが、123℃では固まってすぐには溶解しなかった。以上より終了点は120℃以上125℃以下とすることにした。


(3) ジュースの濃縮倍率とRGB値

 写真3のRGB変化を図2に示した。濃縮倍数の上昇とともにRとGが大きく低下していく。Bも低下するがその低下率は小さい。



(4)製造条件検討結果のまとめ


 ①ボトルネックは煮沸濃縮工程である。現有のガスコンロの能力で3hrで濃縮を終了するためにはジュース量は7000g以下、 サトウキビ本数は30本以下とした。
 ②茎は十分に洗浄し、表面の蝋を除去する。(写真4の①)
 ③ジュースは茎洗浄後すぐに取得し、布巾で濾過して茎残渣などを除去する。(写真4の②)
 ④ジュースの精製法として消石灰を添加する方法があるが、これは採用せずそのまま加熱する。
 ⑤沸騰すると緑色の灰汁(アク)を含んだ泡が発生し、放置するとあふれてしまう。灰汁取りシャモジで灰汁を除去する。(写真4の③)
 ⑥沸騰開始時点で発生した灰汁をとると、その後は発泡はなく蒸発が進む。表面に浮かんだ少量の灰汁は30分おきに除去する。(写真4の④)
 ⑦煮詰まってくると激しく発泡する。液の粘度が上昇し水蒸気が逃げにくくなるからである。撹拌すれば発泡は抑えられる。また焦げ付きを防止するため連続して撹拌することが必要である。(写真4の⑤)
 ⑧120℃を超えたところで鍋からステンレス製のボウルに濃縮液を移しかき混ぜる。撹拌の目的はショ糖の種晶を作るためで有り、種晶がうまくできないと飴状になってしまう。そこで液がネバリと白味を帯びて
 くるまでひたすら撹拌する。(写真4の⑥)
 写真④の⑥は撹拌が終わりステンレスバットに入れる直前である。(撹拌中は写真撮影することできず)
 ⑨ステンレスバットに均一に流し込み冷却する。(写真4の⑦)
 ⑩まだ固くならないうちに包丁で切れ目を入れておく。こうすると後から剥がしやすい。(写真4の⑧)
 ⑪一夜冷却したら黒糖のできがり(写真4の⑨、そしてサンプル袋にいれたところ。(写真4の⑩)




 


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