169. 糖蜜発酵廃液エタノール分画物のメイラード反応に及ぼす作用 2018年3月15日

(1)はじめに

 前節で調製したエタノール抽出分画物をMSG-グルコース メイラード反応系に添加してその作用につき実験した。


(2)実験方法

 実験条件と実験水準を表1に示す。
 水浴での反応方法は103節と同じである。
 水浴とインキュベーターの温度経過を図1に示す。


(3)反応液外観の変化

 写真1に外観の変化を示した。
 紺の枠で囲った範囲の中央部のRGBを測定した。
 


(4)R、G、B、Tの変化

 R,G,B,Tの変化を図2に示す。
 数値が低下すると暗色化し、上昇すると明色化していることになる。



(5)サンプル固形分とR,G,B,T Slopeの関係

 図2のプロットを1次近似しそのSlopeを求め、図3にサンプル固形分対してプロットした。(図3)
 Slopeが正の値の場合は明色化を、負の値の場合は暗色化していることを示している。
 いずれの条件のおいてもサンプル固形分の増加とともに明色化している。

 


(6)エタノール濃度と暗色化抑制の関係
 
 サンプル固形分とSlope T の相対値(サンプル固形分濃度0のときを100%とする)の関係を図4にプロットし、SlopeTの相対値が50%になる固形分濃度を求め図5に示した。 
図5によればエタノール濃度が低いほど暗色化抑制作用は大きいと言える。(少ない固形分濃度で暗色化を抑制する)


 


(7)反応前後の紫外可視吸収スペクトル

 反応前および10日間反応後の紫外可視吸収スペクトルを反応液を遠心分離後50倍に希釈して測定した。
 その結果およぶ反応前後の吸光度増スペクトルを図6に示す。

 


(8)サンプル固形分濃度と相対OD増の関係

 ①OD500nm図7-1
  サンプル固形分濃度とともにOD増は抑制されるが、さらなるサンプルの増加により抑制がなくなる場合がある。
 ②OD750nm図7-2
  サンプル固形分濃度とともにOD増は抑制されるが、抑制の度合いはOD500nmより弱い。さらなるサンプルの増加により抑制がなくなる場合もある。
 ③OD370nm図7-3
  OD370はOD増がピークになる波長である。
  サンプル固形分濃度とともにOD増は促進される。
 ④OD300nm図7-4
  OD300nmはMSG-グルコース反応系で明瞭に増加する波長のODである。
  しかるにサンプル固形分濃度増加とともにOD増は促進されている。
 ⑤OD220nm
  OD220nmはカルボニル基に由来する吸収と考えられる。
  サンプル固形分濃度増加とともに明らかにOD増は抑制される。

 


 

 相対OD増が抑制されて、50%抑制濃度が求められたのはOD550nmとOD220nmだけであった。(図8)
 OD550nmはエタノール濃度によらず50%抑制濃度は一定であった。
 OD220nmはエタノール濃度の増加とともに50%抑制濃度は低下した。
 
 



(9)おわりに

 水槽試験液にMSG-グルコース系のメイラード反応を抑制する作用を期待したが、そのような作用は認められなかった。
 可視部の暗色化はR,G,B,T解析およびOD500nm増分から抑制されているものの、OD300nmの吸収はむしろ促進されたので、メイラード反応が抑制されたとは言えない。
 OD220増の抑制はOD220成分が消費されてOD370nm成分が生成されたためかもしれない。
 今後は透析とエタノール沈殿を組み合わせた分画を検討し、再度メイラード反応への作用を確かめてみたい。


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