171.糖蜜発酵廃液水槽試験液透析分画物のメイラード反応への作用 2018年4月3日

(1)はじめに

 前節で取得した透析外液濃縮液と透析内液上澄について、MSG-グルコース系メイラード反応に及ぼす作用につき実験した。


(2)実験方法
 
 表1の実験水準で写真1に示すインキュベーション方法で10日間反応を行った。
 温度経過を図1に示した。


(3)反応液のRGB変化

 反応液の色変化を写真2に示す。
 この写真よりRGBおよびT値を求め、表2,表3に示した。
 
 
 

 反応日数とT値を直線近似したときのスロープを求め、サンプル固形分濃度との関係を図2に示した。
 これによれば、透析外液濃縮液はメイラード反応によるT値の低下(暗色化)を40~60%に抑えている。
 透析内液上澄液はT値の低下を完全に抑えている。

 


(4)反応前後の紫外可視吸収スペクトルの変化
 
 反応前後の吸光度のスペクトルを図3に示す。
 
 

 コントロールのOD増分を100%としたときの相対OD増分のスペクトルを図4に示す。
 透析外液は280nm以上の長波長でサンプルを添加した方が相対OD増分は減少したが、透析内液上澄では増加した。
 いずれも300~340nmに谷を持つスペクトルを示した。
 
 サンプル固形分濃度と相対OD増分の関係を図5に示した。
 MSG-グルコース系メイラード反応の特徴であるOD300nmを見ると以下のことが言える。
 ①外液濃縮液はメイラード反応を30%程度抑制する。
 ②内液上澄はメイラード反応を10%程度促進する。
 OD500nm、OD450nm,OD370nmでは
 ③外液濃縮液は固形分0.5mg/mlで15%~30%抑制するが、1mg/ml以上添加で抑制作用は弱くなる。
 ④内液上澄はメイラード反応を促進する。
 OD220nmでは
 ⑤外液濃縮液は固形分濃度の上昇とともに抑制する。
 ⑥内液上澄は促進するが、固形分濃度の上昇とともに促進作用は弱くなる。


 


(5)まとめ
 
 透析外液にはMSG-グルコース系のメイラード反応を抑制する作用がある。
 透析内液上澄はT値でみると暗色化を完全に抑制しているが、OD500nm,OD450nmで見ると若干促進している。
 透析内液自体が強く着色しているため、T値のみで判定することはできない。

 分子量3,300未満の低分子画分にメイラード反応抑制作用があることは興味深い。

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