175.放置した餅の変色  2018年5月8日

(1)はじめに

 正月用のつきたての餅にサトウキビの茎に生えたスエヒロタケの子実体を移植した。
スエヒロタケが餅の上で増殖するかどうかを見たかったからである。
結論としてそのもくろみは失敗した。
いつまで待っても、スエヒロタケの増殖は起こらなかった。
 しかし、餅は放置している間に、カビなどの微生物で分解されていった。
そこで、その様子を2年3ヶ月に渡り記録した。


(2)そのまま室内に放置した時期(写真1)

 餅は乾燥してしだいに亀裂が入ってきた。
 水分が少ないため、暖かい5月になってもカビが生えることはなかった。



(3)水を噴霧して放置した時期 (写真3)
 水を週に1度噴霧して水分を含ませた。しかし、水分はすぐに蒸発し餅表面には目立ったカビの繁殖はなかった。
 亀裂の中でカビが少しだけ繁殖し餅が割れていった。



(4)水噴霧+ラップで覆った時期(写真3)
 ラップで覆って水の蒸発を防止するち急激にカビが繁殖した。
 餅は割れ、糖蜜色に変色してきた。



(5)水噴霧とラップに加え、時々混合した時期(写真4)
 混合により餅はバラバラになり糖蜜色のペーストになった。
 アルコール臭が腐敗臭に変わっていった。



(6)プラスチックケースに密封して室内に放置した時期(写真5)
 腐敗臭が強烈になったため、プラスチックケースに密封して放置した。
 カビが旺盛に繁殖し、餅は泥状となった。



(7)屋外放置の時期(写真6)
 室内でプラスチックケースを空けると耐えがたい悪臭が部屋に充満するようになった。
そこで、ラップははずしプラスチックケースに入れて屋外のベランダに放置した。
蓋をしていたので雨水は入らず、しだいに乾燥していった。
乾燥するとほとんど変化は見られなくなったので放置を停止した。




(8)放置した餅のRGBの変化
 図1にRGB変化を示す。
 水噴霧を開始してから糖蜜色(R>G>B)となり暗色化していった。
 屋外放置で乾燥してからはRGBの差が小さくなり黒褐色~黒灰色となった。


(9)餅残渣の粉砕と水の再添加(写真7)

 餅残渣は乾いており容易に粉砕することができた。
 粉砕物に再度水を添加して屋外での再放置を実施した。
 今後は定期的に水を噴霧して乾燥を防いだ状態で観察を続ける。



(10)餅残渣抽出液の紫外可視吸収スペクトル

 図2の方法で水および1%炭酸ナトリウム水溶液で抽出を行い、その紫外可視吸収スペクトルを測定した。(図3)




 
 両抽出液とも200nm付近に強い吸収が認められた。(有機酸のカルボニル基)
 1次軽液(水抽出液)には270nmに吸収ピークが認められた。



(11) pHと臭気

 餅残渣の懸濁液に1%炭酸ナトリウムを添加しpHを上げていったときの(図4)臭気の変化を図5に示す。
 腐敗有機酸臭はpHの上昇に伴い減少した。
 Naイオンで有機酸が中和され蒸発が抑制されるためと考えられる。
 またpH10付近でアンモニア臭が発生した。




(12)終わりに

 餅は乾燥しておれば腐敗しないことを今更のように確認できたことは、新たな感動であった。
 一方で湿状態では迅速に発酵そして腐敗がおこる。
 白くて軟らかい餅が糖蜜色の泥状になり、ものすごい悪臭を放つようになる。
 今後、泥状残渣を湿状態で放置し、その変化を観察する。

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