184.タマネギエキスのメイラード反応への影響 2018年7月20日

(1)緒言

 183節で調製したレンジ有無のタマネギからホワイトリカーで抽出したエキスにMSG-グルコース系のメイラード反応を抑制する作用があるかどうかを見てみた。

糖蜜色コレクション113節では大変粗い実験ではあるが、スパイスとして販売されているオニオンパウダーのウオッカエキスにはメイラード反応抑制作用があることを記載した。
また研究日誌137節の表8にはタマネギに抗糖化作用があるとの情報を引用して記載した。



(2)実験方法

 実験手順を図1に反応液の配合表を表1に示す。





(3)実験経過

①外観(色)の変化(写真1)

 基質の入っていない条件では暗色化はきわめて僅かしかおこらない。
 基質の入った反応液にエキスを添加した場合、暗色化が抑えられることを期待したが、残念ながら肉眼で判別できるほどの効果は認められなかった。

 

 ②臭気の変化(表1)

 基質がない場合、レンジなしタマネギのエキスは最初から10日目までタマネギ臭がした。
 レンジありタマネギのエキスは最初は無臭もしくは甘い香りであったが時間がたつにつれてタマネギ臭に変わった。
 基質がある場合、レンジなしタマネギのエキスは最初タマネギ臭がしたが、反応途中から甘い香りに変化した。
 レンジありタマネギのエキスは最初からタマネギ臭はほとんどせず、早い時期に甘い香りに変化した。
 

  


(3)紫外可視吸収スペクトル

 スペクトル1(反応前)を図2に、スペクトル2(40℃*10日反応後)を図3にスペクトル3(100℃*30分反応後)を図4に示した。


 
 


(4)反応前後のOD増スペクトル

 40℃*10日反応前後のOD増スペクトルを図5,に100℃*30分反応前後のOD増スペクトルを図6に示す。
 基質なしの場合、全波長範囲でOD増はわずかである。
 基質ありの場合300nm付近のOD増に明瞭なピークが認められた。
 40℃で10日間反応させた場合よりも100℃で30分反応させた場合の方がOD300増は20倍も大きい。
 
 


(5)相対OD増スペクトル

 エキスを添加していない場合のOD増を100%としたときの相対OD増スペクトルを図7と図8に示す。
 相対OD増が100%未満であればMSG-グルコース系でのメイラード反応抑制作用があり、100%以上であればメイラード反応促進作用があると言える。

 



(6)サンプル(エキス)添加固形分濃度と相対OD増分の関係

①40℃*10日反応の場合(図9)
 レンジなしタマネギエキスの場合、OD420とOD380では20%程度のメイラード反応抑制作用がある。
 OD340とOD300では低濃度では僅かな抑制作用があるものの、高濃度では促進作用に変わる。
 レンジありタマネギエキスの場合、すべてのODにおいて低濃度では僅かな抑制作用があるが、高濃度では20~30%の促進作用に変わる。

 
 ②100℃*30分反応の場合(図10)
 
 メイラード反応抑制作用は認められず、10~20%程度の促進作用が認められた。

 


(7)反応前に基質ありとなしのOD差

 不思議なことに、基質ありと基質なしのODに差があることを分かった。
 図11にはOD差スペクトルを示すが、280nmと440nm付近にピークを有す。
 図12にエキス固形分濃度とOD差の関係を示す。
 レンジなしの場合はエキス固形分濃度の増加とともにOD差も増加するが、レンジありの場合はエキス固形分が低いところでOD差は高く固形分の増加とともに低下した。

 



(8)まとめ

 ①タマネギエキスの添加量を増やすにつれ、メイラード反応抑制作用が大きくなることを期待したが、そうはならなかった。
  エキス添加量の低いところで僅かな抑制作用があり、エキス添加量の高いところで促進作用が認められた。
 ②基質(MSG+グルコース)とタマネギエキスを混合しただけで280nmと440nmの吸光度が増加した。
  MSGもしくはグルコースとタマネギエキスは何らかの色素物質を生成している可能性がある。
  この点につき確認実験を実施する予定である。

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