207. (続)カビ付き黒砂糖シロップの放置

 本節は第142節「カビ付き黒砂糖シロップの放置」の続編である。
 写真1は2017年8月7日から12月19日の経過である。
 各写真の左側は新サトウキビから取得した黒砂糖のシロップ、右側は旧サトウキビから取得した黒砂糖のシロップである。
 新サトウキビシロップは当初ベージュ色のコロニー(耐糖酵母)で覆われていたが、その上に白いコロニーが生育し増加していった。
 旧サトウキビシロップはサンプリングにより白いコロニー(別の耐糖酵母)の被覆率が50%程度になっていたが、しだいに広がり10月にはほぼ100%となった。


 
 写真2は2017年12月26日から2018年5月14日までの経過である。
 この間、新サトウキビシロップの状態は見掛け上ほとんど変わらなかった。
 一方、旧サトウキビシロップは気温の低下とともにコロニーの被覆率が低下していった。

 

 写真3は2018年5月21日から10月1日までの経過である。
 新サトウキビジロップでは従来のベージュ色、白色のコロニーに加え7月にはいって緑灰色のコロニーが生育し始めた。
 8月にはいるとシロップが表面のコロニーに浸みだし、糖蜜色の染みがが見られるようになった。
 旧サトウキビシロップでは気温の上昇とともに白いコロニーの被覆率が上昇し、7月には100%に達した。
 コロニーの色は従来の白色からベージュ色に変わってきた。
 シロップの表面コロニーの浸みだし、線状の染みが見られるようになった。
 

 写真4は2018年10月8日から11月26日の状態で、さらに多くのシロップが表面に浸み出てきた。
 表面のコロニーの重量が増加し、シロップの糖分が消費されてその比重が低下したためではないかと考えられる。
 


 図1に室温変化を図2には新サトウキビ株シロップの重量変化を図3には旧サトウキビ株の重量変化を示す。
 シロップの重量は全体として減少したが、気温と湿度が高くなる時期には吸湿して増加し、この時期にコロニーの増殖が活発となる。



 図4に示すように新株シロップの重量と旧株シロップの重量には強い正の相関がある。どちらのシロップも同じ環境因子(温度と湿度)に支配されているということである。
 図5,図6に示すように室温とシロップ重量には弱い相関がある。温度の高い時期は湿度も高く、多くの水分を吸収するからである。




 写真5の5種のコロニーの顕微鏡写真を写真6と写真7に示す。
 白色のコロニーAとDは菌糸状、ベージュ色のBとEは楕円形の酵母、緑灰色のCは球形の酵母であった。



 
  

 写真8に示す位置にエビオス錠を置き、観察を続けることにした。
 糖以外の栄養源が豊富なエビオス錠の周囲で、どのようなコロニーができるかを楽しみにしている。
 


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