267.収穫した黒大豆の麹発酵 2019年12月22日

 第266節で収穫した黒大豆に種麹をまぶして発酵経過を記録した。
 収穫した黒大豆は写真1にように水で洗浄した。
 このとき水に沈む豆と浮く豆があった。
 浮く前の比率はA品<B,C品<<D品であった。
 発酵には沈んだ前のみを使用した。またD品は量が少なかったため実験から除外した。(写真2)



 水に沈んだ豆をオートクレーブで殺菌した。(写真3)


 オートクレーブ殺菌した豆20gをシャーレに取り 1gの種麹を添加してまぶした。
 種麹は今まで黒大豆きな粉の発酵に使用したものと同じである。
 発酵は30℃のインキュベーターで行った。その経過を写真4に示す。
 A品にはコウジの増殖は僅かで有り。B,C品には旺盛な増殖が認められた。

 表1には発酵時の重量経過、表2と図1には発酵時の重量減少を示した。
 発酵時の重量減少は明らかにB,C品がA品より大きかった。
 これより正常な黒い大豆の表皮は麹発酵を阻害すると言える。
 

 発酵黒大豆は経時サンプリングして冷蔵保存しておき、最後にいっせいにホワイトリカー200mlを加えて室温での浸漬抽出を
おこなった。その経過を写真5に示す。
抽出濾液はA品は清澄であったが、B,C品の発酵3日、6日のものは白濁していた。
1週間静置することにより白濁物質は沈降し清澄化した。
清澄化した濾液の色調はA品は赤みを帯びており、B,C品は黄みを帯びていた。
可視部の吸収スペクトルにも大きな違いがあり、後述する。




 発酵黒大豆のホワイトリカー抽出と抽出濾液の総ポリフェノール(TPP)分析データを表3に示す。


 抽出残分はA品、B品とも発酵日数6日のものが大きかった。
 浸漬前の発酵黒大豆の重量が低いことがその理由である。発酵中の水分蒸発と炭酸ガスの飛散によるものと考えられる。




 TPPは濾液をホワイトリカーで5倍希釈したものをフォーリン・チオカルト法で分析した。
 濾液のTPP分析値の経過はA品とBC品ではまったく異なっている。
 A品は発酵日数とともに減少し、BC品は発酵とともに増加した。
 麹が良好に増殖した場合はTPPの増殖がおこるが、増殖が不良の場合はTPPはむしろ減少したのである。



 図4に濾液のTPP測定時のブランクの紫外可視吸収スペクトルを示す。
 スペクトルには270nmと330nmにピークまたはショルダーが認められた。



 OD270nmの経過を図5に示す。
 常にB,C>Aであるが、発酵により低下した。
 この物質は黒豆内部から漏洩された物質であると考えられる。
 OD330nmの経過を図6に示す。
 発酵が進んだB,Cで増加し、発酵が進まなかったAではほぼ一定であった。

 図7には可視部の吸光度と吸光度差(BC-A)を示した。
 吸光度は常にBC>Aで発酵が進んだサンプルは500nmの吸収と600nmより長波長の吸収が大きかった。
 600nmの吸収は完全に沈まなかった濁度によるものかもしれない。
 


 黒大豆の麹発酵において黒色の表皮は発酵を阻害しTPPも減少させる。
 従って目的とするTPPが増加した発酵物を得るためには表皮を破壊したきな粉を用いるのが良いと結論する。


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