394.黒色物質を移植したバガス 3

 本節は第365節の続きである。
 ハイポネックス0.3%水溶液に黒色物質移植バガスを混合室内の窓際に放置した。
 黒色物質の正体はすす病菌の胞子である。
 放置したビーカーはシャーレで蓋をし、蒸発水分は水道水で補填した。
 写真1にその放置経過を示した。
 当初 糖蜜色であった沈降層はしだいに緑色に変化していった。
 緑色のシアノバクテリアがハイポネックスから栄養を得たことにより旺盛に繁殖している
 ことが覗える。


 2022年7月18日に放置液を濾過し図1のように沪液と沪過残渣に分離した。


 図2にpHの経過を示した。
 pHは3前後まで低下した。
 図3にECの経過を示した。
 ECは放置とともに低下し、ハイポネックスが消費されていることが分かる。
 図4に沈降層上部のRGB変化を示した。
 最初はR>G>Bの糖蜜色であるが、2022年3月20日以後R<Gとなり緑色となった。
 図5はpHとECの相関関係を示した。
 図6にはpHと沈降層上部RGBの関係を示した。
 R>GとなるのはpHが3.5より低くなったときである。
 図7にはECと沈降層上部RGBの関係を示した。
 R>GとなるのはECが2.5(mS/cm)より低くなったときである。


 沪過残渣の顕微鏡画像を写真2~写真6に示した。
 写真2に示すように黒色物質の正体であるすす病菌胞子は存在していた。


 写真3は球状で緑色をしたシアノバクテリアである。

 写真4には褐色の球状細胞を示した。
 カビの胞子ではないかと思う。


 写真5はカビの菌糸と考えられる。

 写真6はバガス繊維上に見えた不思議なリング状の物体である。
 螺旋状に巻いているようにも見える。

 顕微鏡画像からバガスに付着したシアノバクテリアとカビは図8に新すようなしめすような共生関係にあることが想定される。
 シアノバクテリアの生産する酸素と光合成生産有機物を得てカビが繁殖し、カビの生産する二酸化炭素を得てシアノバクテリアが
 繁殖しているのである。
 カビに付着したカビはあるいはバガスを分解して栄養源にしている可能性もある。

 通常シアノバクテリアのみを通気なしにハイポネックス溶液にいれて放置すると炭酸不足となりpHは上昇する。
 今までの経験ではpHが10を超えることがある。(図9 ケース1)
 一方通気をすると炭酸ガスは十分に供給されpHは変化しない。(図9 ケース2)
 今回は図9 ケース3に相当する。
 通気をしなくても共生しているカビから炭酸ガスが供給されるのでpHは上昇しない。
 pHが低下する原因は図9①②③が考えられる。




 沪過残渣が沪液と混合して再放置を開始した。
 今後の関心はカビによりバガスが分解していくかどうかである。
                   

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