441. 微生物コロニーの糖蜜発酵廃液の脱色7 2023年8月16日

 本節は351節の続きである。
 糖蜜発酵廃液に脱色能力のある微生物を添加し放置したが、結局増殖してきたのは放置中に混入した球状のシアノバクテリアであった。
このシアノバクテリアによって確かに糖蜜発酵廃液の色度は低下したが、その低下速度は極めてゆっくりであった。
その原因として考えられるのは次の2つである。
 ①増殖したシアノバクテリアの量が十分でなく、緑色も消失し、老化している。。
 ②混入したシアノバクテリア本来の脱色能力が低い。
                    
 そこで、図1に示す方法によって以下の確認を行うことにした。
 ①沈降しているシアノバクテリアを濾紙で分離し、ハイポネックス水溶液に入れれば、緑色となり旺盛に増殖するかどうか。
 ②脱色能力の高いシアノバクテリアを大量に糖蜜発酵廃液(沪液)に添加すれば、脱色が早くなるかどうか。


 図2は沪過分離した残渣(老化していると考えられるシアノバクテリア)をハイポネックス水溶液に懸濁し再放置したときn経過である。
シアノバクテリアはすぐに緑化し、旺盛に増殖した。



 図3は糖蜜発酵廃液(沪液)に脱色実績のあるシアノバクテリアを大量に添加して放置したときの経過である。
 2021年4月29日から2021年10月4日まで放置後分離して沪液の色調を観察したが、脱色の程度は僅かであった。

 大量のシアノバクテリアを添加してもほとんど脱色効果はなく、 脱色効果は少量のシアノバクテリアが増殖していく過程で現れるのでは
ないかと考えた。
 そこで大量のシアノバクテリアは除去し、僅かに付着して残っていた空瓶に沪液を入れ、放置したのが図4である。
当初僅かであったシアノバクテリアはしだいに増加し、それに伴い色度も明らかに低下した。


 図5はハイポネックスを添加したシアノバクテリア懸濁液のRGB変化である。
 放置後すぐにG>R>>Bの鮮やかな緑色となり、その後暗色化し深緑色となった。
 図6は同じくRGB%の変化である。
 放置後2ヶ月までのG%が最も高かった。


 図7は脱色実績のあるシアノバクテリアを添加した糖蜜発酵廃液(沈降上清)のRGBおよび白色度の変化である。
 図8、図9はそれをグラフにしたものである。
 ①放置期間を通じてRはほぼ一定であった。
 ②Gは高濃度シアノバクテリア存在時はむしろ低下し、シアノバクテリアを低濃度にしてから急速に上昇し、その後一定となった。
 ③Bは放置期間中、ずっと上昇を続けた。
 ④白色度は放置期間中、上昇を続けた。


 写真1は沪過残渣(シアノバクテリアフロック)の接写画像、写真2は顕微鏡画像である。
 

  今回もシアノバクテリアにより糖蜜発酵廃液の脱色が可能であることが分かった。
 それ以外の微生物でここまで脱色できるものは見当たらない。
 ただし、脱色にはシアノバクテリアが増殖することが必要で、脱色には膨大な時間を要する。
 シアノバクテリアを使用した糖蜜発酵廃液の脱色法につき実用化を目指した研究を進めたいと思う。

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