418. 栄養源を添加したブドウ皮のインキュベーション 2021年7月3日
第416節に記したようにブドウの皮に水を添加して放置しても微生物によって分解されることはなかった。
微生物がブドウの皮で旺盛に繁殖しないのは栄養源が足らないのではないかと考え、グルコースとMSG(グルタミン酸ナトリウム)
を添加してインキュベーションする実験を実施した。
水を添加して放置したブドウの皮を濾過して濾液と残渣に分離し、残渣は乳鉢で磨り潰した。
また濾液は水道水で60mlに希釈した。
その過程を写真1に示した。
インキュベーションの条件を表1に示した。
磨り潰したブドウの皮残渣を一定量シャーレに採取し、グルコースとMSGを条件表のように添加した。
そこに希釈した濾液を10ml添加した。
これを35℃でインキュベーションした。蒸発による重量減少は1日1回水道水の添加により補填し、同時に写真撮影を行った。
写真2にインキュベーション外観経過を示した。
最初に(2日目)微生物コロニーが認められたのはNo.4(グルコース0.05g+MSG0.05g)であったが、そのコロニーはインキュベーションを続けても広がることはなかった。
次に(7日目)微生物コロニーが認められたのはNo.2(グルコース0.1g)であり、8日以後残渣が粘性物に覆われて液と分離していった。
No.1(無添加)は明瞭な変化は認められなかった。
No.2(MSG0.5g)はコロニーの発生はなく、液が暗色化した。
図1に累積重量減少を比較した。
No.2が最も重量減少が大きく、基質が消費され炭酸ガスおよび水として蒸散したと考えられる。
No.4はコロニーが発生した2日~3日には最も重量減少が大きかったが、その後の減少は衰退した。
No.1とNo.4は同程度の重量減少であった。
18日間のインキュベーションを終え濾過して濾液と残渣に分離した。(写真3)
濾液の色はNo.2が最も明るく、MSGを添加したNo.3とNo4は強く暗色化していた。
濾過残渣はグルコースを添加したNo.2とNo4が凝集していた。
濾過残渣の顕微鏡画像を写真4に示した。
微生物の繁殖が明瞭に認められたのはNo.2(グルコース0.1g)とNo.4(グルコース0.05g+MSG0.05g)であった。
またNo.2(グルコース0.1g)は明らかにブドウ皮の分解が進んでいた。
これよりブドウ皮の微生物にはグルコースが必要で有る事が分かった。
濾液の紫外可視吸収スペクトルを図2に、またOD420nmを図3に比較した。
OD420nmは当然ながら冷蔵保存していたサンプルが最も低かったがグルコースのみを添加したものは無添加より
低かった。グルコースを添加して増殖した微生物はブドウ色素を脱色する作用があるようである。
MSGのみを添加したもののOD420nmは最も高かった。グルタミン酸とポリフェノールのメイラード反応が起こっていると
考えられる。
ブドウ果汁にはグルコースとフラクトースがたっぷり入っている。
ブドウの皮はこれを外部の微生物から守るため、きわめて微生物耐性が強くなっていると理解し,納得した。
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