25.スパイスのウオッカ抽出液の色  2014年7月16日

(1)はじめに
 スパイスは抗酸化作用の強い食品である。15.サトウキビ由来物質の抗酸化性 でも示したようにクローブはORAC値の高い食品の第1位である。
一方、高度不飽和脂肪酸であるDHAは非常に酸化されやすい物質で、酸化されると著しい悪臭を発生する。
私は抗酸化作用の強いスパイスとDHAを混合すればDHAの酸化を抑えられるのではないかと考え、それを実験で確認して下記特許を出願した。
 出願番号   特願平6-307484
 出願日    平成6年(1994年)12月12日
 出願人    旭化成工業株式会社
 発明の名称 DHAを添加したスパイス

 その後15年が経過した2009年に私はバンコクのアパートでスパイスをウオッカ(エタノール濃度40vol%)で抽出し、その抽出液の色を調べてみた。


(2)粉状スパイスとDHAオイルを混合して空気中に放置したときの異臭発生までの日数
 上記特許出願後も私は図1の方法で実験を継続し、DHAオイルと混合する粉状スパイスの種類によって異臭発生までの日数がどのように変化するかを観察した。
その結果を図2-1と図2-2に示した。
クローブとナツメグは驚異的な異臭発生防止効果を発揮し400日以上放置しても異臭の発生は認められなかった。(クローブは500日では異臭発生は認められなかった)
ついでワサビ、ジンジャーの効果があり、異臭発生日数はおよそ150日であった。




(3)粉状スパイスのウオッカによる抽出
  実験方法を図3に、ウオッカ抽出経過(色変化)とRGB値測定結果を写真1,2,3に示した。

 




(4)スパイスのウオッカ抽出液をティッシュペーパーに吸収させたときのRGB値
 いずれもR>G>Bとなり糖蜜色である。
 重曹を添加したときの方が添加しないときとりRGB値は低下し(暗くなる)、その差も示してある



(5)異臭発生までの日数と重曹添加による色度上昇率の関係

 全体としての相関関係は認められないが、A,B,C,Dにグループ分けすると、異臭発生までの日数が長いスパイスほど重曹添加による色度上昇率が大きい。
重曹添加によりpHが上昇し、フェノール性水酸基が解離することにより色度上昇率が大きくなると考えると、色度上昇率の大きいスパイスはフェノール性水酸基を多くもっていると言えるであろう。
すなわち、フェノール性水酸基を多く持っているスパイスほど抗酸化作用も強いということになる。
グループ別による大きな差は次の因子に起因すると考えられる。
①粉状スパイスとDHA油の親和性:親和性が強くDHA油がスパイスの内部組織と一体になるとDHA油は空気と接触しにくくなるが、親和性が弱くスパイス粉末表面にとどまっている場合は空気と容易に接触し酸化されやすくなる。
②フェノール性水酸基を有する物質(ポリフェノール)の抗酸化性の大小
③スパイスに含有する精油の性質:精油がスパイス表面に移動し空気との間に膜をつくる場合は酸化しにくくなる。




(6)おわりに
 ウオッカ抽出実験は「趣味の実験」のレベルであり、(5)の結果もかなり強引に導いたものである。
ただし、スパイスのウオッカ抽出物も「糖蜜色」であることは明白である。
そして、「糖蜜色」がここでも抗酸化作用を持っているということは言えると思う。
クローブの異臭発生までの日数500日というのは500日で異臭が発生したということではなく、500日たっても異臭が認められなかったということであり、その活性は驚異的である。
クローブがORAC値の高い食品の第1位であるのも偶然ではないだろう。


研究日誌の最初のページに戻る