59. MSG-グルコース反応に及ぼすアミノグアニジンの影響 2015年6月23日

(1)はじめに
  アミノグアニジンは生理的条件下におけるメイラード反応を阻害する物質として良く知られている。(ワンダムおじさんの糖蜜色研究、6.4 生体内メイラード反応を抑制する物質)
生体内メイラード反応を阻害する物質の探索に良く使用される方法はグルコースと牛血清アルブミンを 37℃もしくは60℃で反応させたときに生じる蛍光強度を測定するものである。
(39節、表2を参照のこと)
このときの参照物質としてアミノグアノジンが使用されるのが一般的である。
その提案されている作用機序を図1に示す。
図上部の経路ではアミノグアニジンはカルボニルまたはα-ヒドロキシカルボニル糖 および 中間体と反応してヒドラゾンを生成することによりをトラップする。
図下部の経路ではアミノグアニジンはジカルボニル化合物と反応してトリアジンを生成することによりトラップする。


 私の私設実験室には蛍光強度を測定する機器はないので、メイラード反応で生じる紫外可視吸光度の強弱によってメイラード反応阻害物質の評価ができないかどうかを検討している。
そのためには、参照物質であるアミノグアニジンに吸光度の上昇を抑制する効果を確認しなければならない。
本節ではMSGーグルコースの60°におけるメイラード反応をアミノグアニジンが阻害する効果があるかどうかを見ることにした。


(2)実験方法
①試薬
 アミノグアニジン(以下AGと記載)は図2に示す塩酸アミノグアニジンを用いた。
 また反応に使用する水は精製水を用いた。


 MSGとグルコースについては55節に記載した。

②反応液
 2M MSGと 2M グルコースを8:2の比率で水に溶解したもの1mlをサンプルチューブに入れた。
 定められた濃度の塩酸アミノグアニジン水溶液を調整し、その0.5mlをサンプルチューブに入れ混合した。
③反応方法
 ドライバスを用いて60℃で反応させた。58節参照
④紫外可視吸収スペクトルの測定
 反応液のすべて(1.5ml)を水道水で50mlにフィルアップして分光光度計で測定した。吸光度が高い場合はさらに適宜希釈した。


(3)アミノグアニジンの濃度を変えて12hrおよび21hr反応させた場合

①紫外可視吸収スペクトル(図3,図4)


②アミノグアニジン濃度と相対ODの関係(図5,図6)

 アミノグアニジン濃度とともに相対ODが減少したのは可視部のOD460nmのみであり、それより短波長ではODはむしろ上昇した。


 

③アミノグアニジンが0.20-0.33%(高濃度)での平均相対OD(図7)
 
 12hr反応ではすべての波長でODはAG添加により上昇した。
 21hr反応では440nm以上でわずかに減少した。



反応時間を長くすれば可視部のOD上昇を抑制する可能性があるので次に長時間反応の実験を行うことにした。


(4)アミノグアニジン添加、無添加での長時間反応

①紫外可視吸収スペクトルとサンプルの写真 (図8)

 24hr、48hr、60hr反応で明らかにAG添加により可視部のODは減少した。(36hrはそうならず。バラツキがあるか)

②波長ごとのOD変化(図9,図8)
 
 波長400nm以上の可視部では反応時間が長くなるに連れてAGを添加した方が添加しない場合よりODは減少した。
 紫外部では波長が短くなるにつれてODは逆転した。


 

③AGあり/AGなしOD比率のスペクトル(図11)
 
 反応48hrでは450~600nmにおいてOD比率は60%に低下した。
 反応60hrでは450~600nmにおいてOD比率は75%に低下した。
 240nmではOD比率は200-210%に上昇した。MSG-グルコース-AGの反応生成物の吸収と考えられる。



(5)アミノグアニジンの添加時期

①サンプルの写真(図12)
 最初にMSG-グルコース溶液1.0mlのみを60℃で加熱し、0hr,6hr,12hr.24hrにAG水溶液および水0.5mlを添加して48hr反応させた。
 AG添加の方が水を添加した場合よりも着色度が低いことがわかる。


②紫外可視吸収スペクトル(図13)


③AG添加/無添加OD比率(図14,図15,図16)
 アミノグアニジンは最初(0hr)に添加するのが、最も効果があった。添加時期が遅れるにつれ効果へ減少した。







(6)おわりに

 この反応系でアミノグアニジンのメイラード反応阻害効果を評価するには以下の条件が適当である。
 ①アミノグニジンは最初に添加する
 ②反応時間は48hrとする
 ③ODは450~600nmで測定する。
 今後、再度アミノグアニジンの濃度依存性を確認した上で、メイラード反応阻害物質の評価系として確立したい。


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