68. 長期間放置したサトウキビ葉の抽出液の色(新鮮葉との比較) 2015年9月23日

 (1)サトウキビの葉の室内放置
   サトウキビの葉を切り取り、室内の壁にぶら下げて長期間放置した。
  その経過については 「23.切り取ったサトウキビの葉の変色」および「46.放置したサトウキビショウトウ部と葉の変化」に記載した。
  その後の経過も含めてまとめたのが図1である。
  また図2にはRGB値の変化を図3にはT値(T=R+G+B)の変化を示した。

  
  
  これによれば葉は緑色を失い、白色化していくが、放置300日以降はB値が小さくなりなり、R>G>Bの差が大きくなって糖蜜色に変色していくことがわかる。


(2)抽出に使用した葉の処理

 写真1に示すように採取した葉はまず鋏で細断した上で調理用ミキサーで破砕した。


(3)抽出方法と経過

 ①破砕物を2.5g計量しこれを10mlのエタノール水溶液と良く混合した。
 ②エタノール水溶液の濃度は0%,25%,50%、75%,100%の5水準である。
 ③これを60℃に設定したインキュベーターで5hr加熱した。加熱中1hrごとに瓶を振って撹拌した。
 ④加熱終了後、濾過した得た濾液を水で50倍に希釈して紫外可視吸収スペクトルを測定した。


 写真2によると新鮮葉ではエタノール濃度75%以上でクロロフィルが抽出され、強い緑色を呈した。
 長期放置葉ではエタノール濃度25%~75%で黄褐色の色素が抽出された。


(4)抽出濾液の紫外可視吸収スペクトル

 ①新鮮葉、長期放置葉とも可視部より紫外部の吸収が強かった。
 ②新鮮葉ではエタノール濃度75%および100%でクロロフィルに特有の430nmと670nmの吸収ピークが確認された。
 ③長期放置葉では210nm、270nm、320nmにピークまたはショルダーが認められた。


 ④エタノール0%および25%では両サンプルとも500nmより長い波長の吸収は微小であった。500nmより短波長では長期放置>新鮮であった。
 ⑤エタノール濃度が高くなると可視部の吸収は新鮮>長期放置となり、紫外部の吸収は長期放置>新鮮となった。
  吸収の強さが入れ替わる波長はエタノール50%で550nm、エタノール75%および100%で380nmであった。


(5)ピークまたはショルダーとなる波長でのOD比較

 ①OD670nm:エタノール75%以上で新鮮>長期放置。クロロフィルの有無による差である。
 ②OD430nm:エタノール75%以上で新鮮>長期放置。クロロフィルの有無による差である。
 ③OD320nm:全エタノール濃度において長期放置>新鮮。新鮮ではエタノール75%でのODが最も高く、長期放置では25%~75%の広い範囲でODが高くなる。
 ④OD270nm:OD320nmと同じ傾向である。
 ⑤OD210nm:OD320nmと同じ傾向である。
 ⑥長期放置の場合OD320nm、OD270nm、OD210nmはエタノール100%で大きく低下する。
  このことよりこの色素は親水性の高い物質であると考えられる。



(6)考察
 長期間放置した葉が一旦白色化してその後、淡い糖蜜色になっていくのは腐植化が起こっているためではないかと考えられる。
だとすれば、エタノール水溶液ではなく炭酸ナトリウム等アルカリ性の水溶液で抽出した方が良いのではないかと考えられる。
今後、新鮮葉と長期放置葉を100%エタノールで脱クロロフィル処理を実施した上で、炭酸ナトリウムによる抽出を試みることにしたい。

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