71. サトウキビフェノール化合物の有機性値と無機性値 2015年10月21日

(1)有機性値、無機性値について

  有機性値、無機性値についてまとめられた書籍として「甲田善生著 有機概念図-基礎と応用-三共出版(1984)」がある。
この本の「はじめに」の書き出しに、その特徴が要領よく記載されているのでそのまま引用する。
 「有機概念図は有機化合物の性状を、主として炭素数に基づく有機性(共有結合性)と、置換基の性質、傾向に基づく無機性(イオン結合性)に分け、有機化合物を有機軸と無機軸と名付けた直交座標上の1点ずつに位置させて、その性質の概要を理解させようとしたものである。」
 私は高専5年のときの卒業研究で界面活性剤を薄層クロマトグラフィーにかけたときのRf値が界面活性剤そのものの有機性値と無機性値および展開溶媒の有機性値と無機性値によってどのように変化するかを検討したことから、なじみのある概念である。
簡単に言えば、有機性値の大きい有機化合物は親油性が強く、無機性値の大きい化合物は親水性が強いということである。

 その計算には図1を使用し、計算方法は『Excel用有機概念図計算シート』の使用方法http://www.ecosci.jp/sheet/orgs_help.htmlを用いるとよい。
計算例を図2に示した。





(2)サトウキビのフェノール化合物の有機性値、無機性値の計算結果

 16.サトウキビのフェノール化合物に記載した物質の有機性値、無機性値を計算値表3に示した。


 表1では無機性値は無機性値/有機性値の大きさによりⅠⅡⅢの3グループに分けてある。また文献記載の効果についても示した。


(3)サトウキビフェノール化合物の有機概念図における位置

 図3に示すように、サトウキビフェノール化合物は第2生理作用圏と第1生理作用圏のほぼ境界線上にある。
第1生理作用圏は医薬品の多くが含まれ、第2生理作用圏には水溶性の食品成分が含まれる。
サトウキビポリフェノールはまさに食品と医薬品の境界にある物質群と言うことができる。


(4)有機性値vs無機性値直線の勾配によるサトウキビポリフェノールの分類
 
グループⅠは勾配が1.6程度で第1-第2薬理境界線に近い、グループⅡは勾配が2.1程度である、グループⅢは勾配が2.5程度で境界線から最も遠い。
すなわち親水性はグループⅠ<グループⅡ<グループⅢの順に大きくなる。



 抗酸化活性はすべてのグループにあるが、グループⅠの頻度が最も高い。
 ラジカル除去活性はグループⅢが圧倒的に高く、チロシナーゼ阻害活性はグループⅠの頻度が高い。



(5)無機性値と無機性値/有機性値の関係

 図6に示すように、プロットの状態でA,B,C,Dの4種に分類した。
無機性値750-800のところに無機性値/有機性値が急激に低下するグループCがある。
グループAとCはグループⅢの頻度が高く、グループDはグループⅠの頻度が高かった。



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