104. 黒砂糖酵母発酵液アルコール分画物のメイラード反応抑制作用 2016年9月5日
(1)はじめに
101節に記載した4種類の分画物につき103節で記載した40℃水浴法を用いてMSG-グルコース系のメイラード反応抑制効果があるかを検討した。
実験の水準を表1に示した。
(2) 実験経過
①水浴温度の経過(図1)
②サンプルの経過写真(写真1)
③サンプルのRGB変化
写真1の四角に囲った部分のRGB値を表2にまた0hrに対するRGB減少値を表3に示した。
④B値減少経過 (図2)
褐変が進むにつれて短波長である青色の反射が減少していくのでB値の減少経過を持って褐変の度合いを評価した。
図2によれば褐変(メイラード反応)の抑制度合は 旧株沈殿画分=新株沈殿画分>旧株溶解画分>新株溶解画分となった。
⑤沈殿物の生成
いずれのサンプルでも綿状の白い沈殿物が生成した。この沈殿物は水道水を使用した水浴の水にも生成した。繁殖した微生物を主体として凝集物ではないかと思う。
沈殿物の量を目視で4段階(0,1,2,3)に分けて図3に示した。
分画物無添加のサンプルでもこの沈殿は生成しており、分画物の添加量とは無関係であった。
レベル3であったのは旧株沈殿画分100%と新株沈殿画分20%であり、溶解画分にはレベル3はなかった。
192hr反応液をペーパータオルを濾紙として濾過し、濾紙を1夜風乾したときの写真を写真2に示した。
濾過前の液中の沈殿量は多く見えても、濾紙上に残った沈殿は極めて僅かであった。
乾燥後、褐色のスポットが確認されたのは旧株沈殿画分100%と新株沈殿画分20%、50%,100%のサンプルであった。
溶解画分には褐色スポットは認められなかった。
沈殿画分の特に新株のサンプルは暗色が強く、褐色スポットは褐色高分子成分が微生物と凝集して形成したものと考えられる。
⑥臭気
反応中腐敗臭(悪臭)の発生はまったく認められなかった。
表4の臭気はメイラード反応と混入した微生物が生成したものの混合臭であると考えられる。いずれも芳香であった。
溶解画分を50%以上添加した場合はほぼ無臭であり、溶解画分には微生物の増殖を弱く抑制する成分が存在しているかもしれない。
(3)紫外可視吸収スペクトル
①反応開始前のスペクトル(図4)
②反応192hrでのスペクトル(図5)
③反応前後の吸光度増のスペクトル (図6)
④無添加を100%としたときの相対吸光度増スペクトル(図7)
⑤分画物添加量と相対吸光度増の関係(図8)
分画物にはメイラード反応抑制作用があると言える。
330nmの吸光度で比較した場合、沈殿画分はメイラード反応を40-45%程度抑制、溶解画分は20%程度抑制した。
(4)まとめ
相対吸光度が420nmで90%、330nmで80%となる分画濃度を図9に示した。
メイラード反応抑制の度合はB値減少での評価結果と同じく 旧株沈殿画分=新株沈殿画分>旧株溶解画分>新株溶解画分となった。
無添加でも混入菌の影響と見られる沈殿物が発生していたので、分画物のメイラード反応抑制作用は混入菌の影響ではないと考えられる。
今後アルコール沈殿画分をアルコール濃度を変えてさらに分画して、メイラード反応抑制作用の強弱を検討したい。
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