108. メラノイジンの微生物脱色 2016年10月26日
一般的な糖蜜発酵廃液と廃水の処理方法を図1に示す。
糖蜜発酵廃液は当然ながら「糖蜜色」をしている。その糖蜜色の主成分はメラノイジンだ。
(「ワンダムおじさんの糖蜜色研究:第3章 糖蜜色の成分とその性質」を参照されたい。
濃厚な糖蜜廃液は液肥としてサトウキビ農場にリサイクルするのが、通常の方法である。(写真1)
昔、日本では糖蜜を輸入して、発酵製品を製造していたが、リサイクルすべきサトウキビ畑がないためにその処理費用は膨大であった。
発酵廃液はエネルギーを使って濃縮した上で、さらに重油を使って焼却していたのである。
やはり、糖蜜を原料とする発酵工場の立地はサトウキビの生産地とすべきである。
問題は希薄な糖蜜発酵廃水である。
BODは活性汚泥処理により容易に除去できるのだが、メラノイジンは活性汚泥では除去できない。
そこで、活性汚泥の後、特別な脱色処理が必要となる。
例えば、①塩化第二鉄による凝集 ②活性炭による吸着 ③オゾンによる分解 などである。
この分解しにくいメラノイジンを分解する微生物を探索する努力が続けられており、ここでは以下の2つの総説を参考にして結果を表1.表2、表3にまとめた。
参考文献1
参考文献2
多くの微生物はメラノイジンの脱色にグルコースなどの栄養源を要求する。
発酵廃水中の糖は発酵微生物によって食べられてしまっているために、その残存量は少ない。
新たにグルコースを廃水に添加することは無駄であるし、例えこのような微生物を使用して90%の色素が除去できたとしても、10%の色素が残存していたのではやはりオゾン処理などが必要になる。
(もちろん、オゾン処理の負荷は微生物処理をしない場合の10%に下げることができる。)
このようなことから、私は従来、微生物によるメラノイジンの脱色研究に乗り気ではなかった。
しかし、最近になって、メラノイジン脱色微生物はひょっとしたら生体内でできるタンパク質や脂質の糖化産物を分解する酵素を持っているのではないかと考えるようになった。
アンチエイジングのためには生体内メイラード反応を抑えることが大切であるが、できた糖化物質を分解することも重要であろう。
メラノイジン脱色に関与する酵素は、リグニン修飾酵素(表4)と呼ばれている。
これらの酵素がメラノイジンだけでなく、生体内の糖化物質を分解するかどうかは分からないが(たぶん違うだろう)、今後はそのような観点から微生物によるメラノイジン分解の研究をしてみたいと考えている。
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