109.糖蜜発酵廃液の土壌微生物による脱色 2016年10月30日
(1)糖蜜発酵廃液
私がかって勤務していたThai Foods International社で糖蜜を原料として酵母を培養した廃液を使用した。
同社ではこの廃液を液体肥料等に有効利用しているので、正しくは副産物であるが前節(108節図1)の表記にあわせ糖蜜発酵廃液と呼ぶことにする。
糖蜜発酵廃液は常温でも腐敗しないように固形分濃度50(w/v%)に濃縮したサンプルを提供していただいた。
(2)土壌サンプル
土壌サンプルは私のサトウキビ畑およびその近くの場所から採取した。(写真1、写真2)
(3)土壌サンプルを添加した糖蜜発酵廃液の放置(写真3)
各種土壌サンプル5gをペットボトルに入れ、これを固形分0.5%に希釈した糖蜜発酵廃液と混合してベランダ(屋外)に10日間放置した。
ペットボトルの蓋は空気が入るように緩くした。
10日間放置後、土壌を濾過し、濾液を同じ方法でさらに19日間放置した。
(4)放置した糖蜜発酵廃液濾液の色
濾液を水で10倍希釈したときの外観を写真4に示す。
土壌サンプルのうちNo.1の色が最も薄いように見える。
土壌サンプルを添加しなかったNo.0は再放置開始後は赤みを帯びているが、再放置19日後は黄みを帯びて、全体として明るい色になっている。
RGBを図1に比較した。
再放置19日のRGBは以下のようになった。
①R値 土壌無添加No.0が最も明るい。次いでNo.1=No.2である。
②G値 土壌無添加No.0が最も明るい。次いでNo.1>No.2である。
③B値 No.1が最も明るい。
(5) 放置した糖蜜発酵廃液濾液のpH
土壌を添加した濾液は添加しないものよりpHは高かった。
再放置0日目はいずれのサンプルも強い腐敗臭がした。
再放置19日目は土壌無添加のみ腐植臭(悪臭ではない)がした、土壌添加サンプルはほぼ無臭であった。
(6) 放置した糖蜜発酵濾液の紫外可視吸収スペクトル
図3に示すように明らかに土壌サンプルNo.1の吸光度が全波長領域で低かった。
OD420nmを比較すると土壌サンプルNo.1が最も低く、ついでNo.2とNo.3であった。
No.4とNo.6も土壌無添加よりやや低くなった。
一方No.5は土壌無添加よりも高くなった.No.5はバガス置き場の土壌であり、カブトムシの幼虫が多数棲息していた。
バガス由来の腐植物質が多く、それがOD420を上げた可能性がある。
(7)今後の実験
No.1の土壌の中に糖蜜発酵廃液を脱色する微生物が存在すると判断し、No.1の濾液をシードとして写真5のような実験を開始した。
糖蜜発酵廃液希釈液は水中ポンプ(6L/min)で循環している。
どのような経過となるか楽しみである。