115. 糖蜜発酵廃液の水槽脱色試験 2016年12月6日
(1)はじめに
本節は109節「糖蜜発酵廃液の土壌微生物による脱色」の続報である。
(2)方法
写真1のような装置で実験を行った。
30kgの水道水に脱色作用のある土壌微生物を含む液100mlを添加し、糖蜜発酵廃液を固形分として0.25%になるように添加した。
水中ポンプで6kg/分の流速で循環し、30日間経過を観察した。
蒸発水分は水道水を補給して液面を一定に保った。
累積水道水補給量を図1に示した。
(3)実験経過
①循環流量(図2)
15日あたりから流量が低下しはじめた。
ホース内壁に微生物が付着して抵抗が増加したためと考えられる。
②温度(図3)
温度コントロールはしていないので、冬が近づくにつれ液温は低下した。
水中ポンプの発熱により外気温よりは高かった。
③pH(図4)
19日までpHは上昇したが、それ以後は一定となった。
④液面の状態変化(写真2)
経過とともに水槽内壁にバイオフィルムが形成された。
写真2ではその様子がよくわからないので写真3に拡大して示した。
⑤サンプルの色(写真4)
肉眼で判別できるような色度の低下は認められなかった。
(4)紫外可視吸収スペクトル
写真4のサンプルを凍結保存したものを融解し、その1mlを遠心分離し、残渣を水で1回洗浄した上澄を加え、50mlにフィルアップしたものの紫外可視吸収スペクトルを測定した。
図5,図6,図7にその結果を示す。
200nm付近にピークが、270nmに肩が認められたのでOD200、OD270と着色度を表すOD420の変化を図7,8,9に示した。
①OD420
18日まで少しずつ低下したが、その後上昇に転じた。
②OD270
18日まで低下したが、その後上昇に転じた。
③OD200
18日まで大きく低下し、その後 一定となった。
(5)pHと相対ODの関係
図11に示すようにOD420はほとんど低下せず、OD270は20%、OD200は40%低下した。
OD200とOD270は有機酸の吸収ではないかと考えられ、添加した土壌微生物によりそれが消費され、pHが上昇したと推定する。
図12に示すようにpHとODには負の相関が認められた。
(6)まとめ
着色度OD420は18日までは僅かに低下したが、その後、上昇に転じた。
おそらく、多くの文献に報告されている微生物と同様、この微生物も栄養源がないと脱色作用が働かないと考えられる。
廃液中に有機酸や糖がある間は脱色作用が働くが、それらが欠乏すると停止するのであろう。
30日以後は循環を止めて静置し、状況を観察することにした。
いずれ、この系に適した脱色微生物が増殖してくることを期待している。
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