77. サトウキビの根こそぎ収穫  2016年1月9日

(1) はじめに
  2014年末から2015年はじめにかけて刈り取らなかった旧サトウキビ畑(65. 刈らなかったサトウキビのその後(旧畑)のサトウキビを根を含めて収穫した。
目的は①種茎を植えてから3年経過した根の状態を観察すること。
    ②刈り取らなかった旧株と2015年に新たに芽を出して成長した新株の状態を比較すること。
    ③旧株と新株から黒砂糖をつくり、その収量および紫外可視吸収スペクトルを比較することである。


(2)収穫までの生育経過
 
 収穫は4回にわけて以下の日に実施した。
 1回目:2015年12月22日、 2回目:2015年12月24日、 3回目:2015年12月26日、 4回目:2016年1月4日

 


(3)収穫後の状態

①写真2は根こそぎ収穫した直後のものである。
 根の大きさはサトウキビ全体の大きさと比較すると小さかった。特に根の張りは深くはなかった。
この畑は表面から30cmの深さに硬い土の層があるせいかもしれない。
それにしても、この小さな根であれば台風でサトウキビが容易に倒伏するのは当然であると考えられる。
根は小さいけれども横方向にしっかりと広がっていて、手で引き抜けるものではなかった。スコップで掘り起こすというかなりの重労働であった。

 ②写真3はショウトウ部、旧株2次茎(側枝と呼ぶらしい)、根を残して枯れたトラッシュを除去したものである。
  この状態ですべての茎に番号をつけ、それが新株か旧株か旧株の場合2次株を何本持っているか等を記録した。
  そのデータを一覧表として示した。この表には根の部分の詳細な写真を付けてある。

 
 ③写真4は新株のショウトウ部、旧株の2次茎(側枝)、すべての株の値を除去した茎である。
  新株の茎は白い蝋の粉で覆われている。旧株の茎はもともと白かった蝋が黒褐色に変色していた。

 


(4)各部位の詳細写真

 この写真でも根の比率が極めて小さいことが良く分かる。
根は小さいけれども強度は強く,土の中の小石もしっかりと抱き込んでいた。


 


(5) 黒砂糖つくり
 
  写真7,8,9,10に黒砂糖つくりの経過を示す。
 黒砂糖のつくりかたは48. 2015年の黒砂糖つくり その1 2015年1月14日)に記載した方法と同じである。
 ①表面を洗浄した茎の色は新株は緑色であり旧株は赤紫が主体であった。
 ②ジュースを沸騰させたとき、浮いてくる緑色をした灰汁の量は新株が旧株より多かった。
 ③新株、旧株ともに黒砂糖をつくることができた。

 


(6) 新株と旧株の本数
  
  新株と旧株の本数はどちらも72本で同一であった。
  旧株の2次茎の本数は84本であった。
  2次茎は小さく、今回黒砂糖つくりには使用せず廃棄した。
  旧株を刈らずに残したら新株は少なくなることを予想していたが、そうではなく旧株と同じ新株が成長した。


 

 旧株の22%は枯れており廃棄した。2次茎0%が25%、1本が15%、2本が21%,3本が7%、4本が10%であった。
2次茎は容易に落下してしまうので、それ自体は砂糖原料にはしにくい。
根をもっていることから、苗として用いるのは容易であると考える。



(7)ジュースおよび黒砂糖の収量

①黒砂糖つくりに使用できた洗浄茎は新株の52.8kgに対し旧株25.7kgと半分であった。(図4)
②黒砂糖の生産量は新株4.2kgに対し、旧株は1.2kgであった。(図6)
②洗浄茎に対するジュースの収率、ジュースに対する黒砂糖の収率とも旧株は新株より低かった。(図2,図3,図5,図7)
④洗浄茎に対する黒砂糖の収率は新株の7.9%に対し、旧株は4.7%であった。






(8)ジュースのpHとBrix
 搾汁直後のジュースpH、Brixとも新株より旧株が低かった。
旧株はpH、Brixともに収穫日が遅くなるにつれて低くなっているように見える。




(9)黒砂糖水溶液の紫外可視吸収スペクトル

 260nmから400nmの波長範囲では旧株が新株より吸光度が大きい。特に270nmから350nmで差が大きい。
一方210nm~220nm付近の吸収は明らかに新株が旧株より大きい。
 旧株にはポリフェノールが濃縮されているかもしれない。


 


(10) まとめ
 ①サトウキビの根は強いが小さく、サトウキビは上部が大きい構造になっており台風などで容易に倒伏する。
  しかし、茎の節目からは2次茎(側枝)が出てきて、しかも根付きであるので、倒れた茎からそのまま土に根を下ろすことができると考えられる。
  サトウキビというのは本来、倒伏を前提として生きている生物ではないかと思えてきた。
  本年はサトウキビを強制的に倒伏させて、どのようになるかを試してみることにした。(写真11)
 
 ②旧株から取得した黒砂糖にはその紫外吸収スペクトルよりポリフェノールが濃縮されている可能性が示唆された。
 私の研究室にはポリフェノールを分析する手段はないが、これから簡便な方法を探して実行できるようにしたい。


研究日誌の最初のページに戻る