79. サトウキビジュースの灰汁と沈殿 2016年2月10日

(1)ジュースの精製方法

 私はサトウキビの茎から搾り取ったジュースを写真1のようにして精製している。
ジュースを沸騰するまで加熱すると緑灰色の灰汁(アク)が浮いてくるので、これを灰汁取り用の網ですくい取る。
さらに、沈殿が生成してくるので、これを沈降および濾過して除去する。
 

 写真2には濾過で灰汁および沈殿を脱水している様子を示す。
 写真3は加熱ジュースの一部をメスシリンダーに入れて静置したときの様子である。
 これによれば、約6hrで沈殿は沈みきる。
 都合上、沈降は一夜実施しているが(夜間は睡眠等で作業をしないため)、6hr静置した清澄液からも問題なく黒砂糖が造れることは確認済みである。



(2) 灰汁と沈殿の乾燥
 
 写真2のように濾過で脱水した灰汁と沈殿を60℃の恒温器に入れて乾燥した。その経過を写真4に乾燥曲線を図1に示した。



 いずれも相対重量約30%で一定となった。
 乾燥した灰汁と沈殿は写真5のように粉砕して粉末とした。


(3)乾燥粉末のエタノール抽出
 
 写真6に示すように、乾燥粉末を無水エタノールで3回抽出すると、緑色の色素はエタノール側に移行し、抽出残渣は灰色となった。(写真7)


 

 エタノール抽出液の紫外可視吸収スペクトルを図2に示した。
 色々な書物を見るとサトウキビジュースの緑色はクロロフィルではなく、ポリフェノールと鉄の錯体によるものであると記載されている。
 しかし、茎の表面はクロロフィル由来の緑色なので、クロロフィルも含有されていると思われる。
 吸収ピークは①230nm ②280nm ③410nm ④670nm付近に認められた。



(4) エタノール抽出残渣のホットプレート加熱
  
 エタノール抽出残渣を50℃で乾燥後、ホットプレート(230℃)で加熱した。
写真8に示す如く、加熱時間とともに褐変、8分目で煙を出して黒色となった。



(5) エタノール抽出残渣のプロパンガスコンロでの灰化

 ホットプレートで炭化したエタノール抽出残渣をステンレス製の容器に入れ、プロパンガスコンロで加熱した。
灰汁、沈殿ともに1分以内に炎を上げて燃焼し、その後炭化物がゆっくりと燃焼し最終的には灰が残った。



(6)強熱加熱残分
 
 写真11はホットプレート加熱前の3次抽出残渣、写真12はプロパンガスコンロで加熱した残留灰分である。
加熱前の乾燥物の重量を100%としたときの強熱残分の相対重量を図3に示した。
ホットプレート加熱では沈殿はすべて炭化したのに対し、灰汁は未炭化部分が残っており、残分も灰汁68.9%と沈殿の63.3%より高かった。
この差が物性によるものか、ホットプレートに置いた位置によるものかは明らかではない。
 ガスコンロで加熱で残った灰分はそれぞれ2.7%、2.5%と大きな差はなかった。
すなわち、両サンプルとも97%は可燃性の有機物である。



 


(7)エタノール抽出液の蒸発乾固
 
 写真13にホットプレートでの蒸発乾固の経過を示す。
両サンプルとも飴状の乾固物が得られた。なめてみると、穏やかな苦味を有していた。



(8)まとめ
 
 灰汁、沈殿ともに加熱(沸騰)により凝集して析出するものであるが、前者は表面に浮遊し、後者は底へ沈降する。
今回の種々の操作での挙動から両者はほぼ同じ成分であると推察された。
固化しやすく、苦味の少ない黒砂糖をつくるためにはこららの凝集物を除去することが必要である。
凝集物の性質を知ることにより、より良い除去方法が見つかるかもしれない。
 製糖工場におけるサトウキビジュースの清浄化のためには図4に示すように石灰乳を添加して凝集を促進させ、分離することが一般的である。
当研究室では石灰や凝集剤を使用せず、加熱や分離方法などの物理的操作のみで精製する方法を考えていく。



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