99. 糖蜜のカビ 2016年8月14日
糖蜜は密閉しておきさえずれば、室温に放置してもカビが生えることはない。固形分濃度が高く水分活性が低いためだ。
熱帯地方で大型タンクに糖蜜を貯蔵した場合にも、糖蜜に雨などが混入して希釈されない限り微生物が増殖することはない。
長期保存中に糖が減少し着色度が上昇していくのはメイラード反応のためだ。
それでは、開放系で糖蜜を放置したらどうなるだろうか?
これを確認するために、 タイ国東北地方の製糖工場で製造された糖蜜を図1のように皿にのせて宮崎県延岡市の私設研究室の室内に放置した。(写真1)
2014年11月19日に放置を開始し、2016年8月13日までの観察結果をここに示す。
写真のように、このような放置条件ではカビは旺盛に生育した。
写真2,3,4,5には皿上糖蜜の変化を示した。
これらの写真を10等分し、横方向中心に10区画を作った。
各区画のカビによる被覆率を目視で推算し、その平均値の変化を示したのが図1である。
糖蜜の表面にカビの小さなコロニーを初めて認めたのは2015年の6月30日であった。その後、カビは急激に繁殖し7月中旬には引く区立被覆率は100%に達した。
このころ外気の湿度が高くなるため、表面に水蒸気が凝結し、薄い水の層ができたのだと考えられる。
水の層に糖蜜が溶解し、カビの生育に都合のよい濃度の糖蜜水溶液となったのであろう。また、気温も上昇し、カビの生育を促進したものと考えられる。
しかし、11月になり湿度、気温が低下すると被覆率は低下し12月には80%となった。
カビの生育は止まり、カビの菌糸体が溶菌していったのだと考えられる。
2016年6月まで、被覆率80%の状態が続いていたが、6月末に再度、カビの増殖がはじまり7月には100%に達した。
図2にはシャーレ中央部のRGB変化を示した。
糖蜜のRGBは低いが、カビの繁殖によりRGBは高くなる。RGBの合計であるTも同様である。
被覆率の違いにより次の4つの増殖時期に分けた。
①増殖前(被覆率 0%)
②1次増殖(被覆率1%~100%。2015年)
③1次溶菌(被覆率99%~80%、2015年~2016年)
④2次増殖(被覆率100%、2016年)
時期別のRGB%を観ると、1次溶菌時期はR%が最も大きく、B%が最も小さくなっており、枯草色に近い。
そして2次増殖期のカビは緑色を帯びている。
このように観てみると、糖蜜の表面に生えるカビもサトウキビの生育と同じように、夏に活発に増殖し、秋から冬に枯れ、次の年の夏に再び増殖するようである。
この観察は今後も継続し、最終的にはカビと糖蜜がどのようになっていくかを確認したい。
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