271. ガラス状黒砂糖の形態変化 2020年1月20日

 現在の自家製黒砂糖の製造方法は搾ったサトウキビジュースを10分間煮沸したのち一夜静置し、沈降する沈殿と上清をサイホンで分離し、
さらに沈殿を含む重液を濾過した濾液と軽液を混合したジュースを原料としている。
 第121節では重液を煮詰めて黒砂糖をつくったところガラス状になったことを述べた。2017年の2月のことである。
 写真1はガラス状黒砂糖を食器乾燥器で乾燥したものを再度叩き割ってフリーザーバッグに入れて室温で保存した。



 このたび実験室を整理していたろころ、すっかり忘れていたガラス状黒砂糖を見つけた。
もう捨てようかと中身を見て驚いた。黒砂糖はガラス状から普通の黒砂糖のようなサクサクした形態に変化していたのである。
 その様子を写真2に示す。



 2017年2月にサイホン重液から黒砂糖を調整したときにはサイホン軽液からも黒砂糖を調整しており、同様に室温保存していた。
 写真3には両者を水に溶解したときの状態を比較して示す。
 サイホン軽液からの黒砂糖溶解液は色は濃いが清澄であった。
 サイホン重液からの黒砂糖溶解液は当然ながら多量の沈殿物を含んでいた。
 注目すべきは重液調製品の方が溶解液の色が薄いことである。


 
 図2には溶解液の紫外可視吸収スペクトルを比較した。
 630nm以上の長波長を除いて常に重液品の吸光度が軽液品より低い。
 図3は220nmの吸光度を基準にして相対吸光度のスペクトルであるが、これも630nm以上を除いて重液品<軽液品である。
 630nm以上の吸光度は遠心分離で落ちなかった濁度物質であり色素物質ではないと考えられる。

  

 軽液品は調製時に比較して23ヶ月室温保存後の色が暗色化している。
 重液品もおそらく同様に暗色化していると考えられるが、形態が違うので保存前後の比較ができない。
 おそらく重液に含まれる沈殿物質の中に暗色化(メイラード反応)を阻害する成分が存在するのではないだろうか。
 
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