272. サトウキビ薄皮剥きの黒砂糖つくりへの影響 2020年1月24日


 サトウキビの茎の薄皮を剝いた時と剝かずなかった場合に黒砂糖つくり全般にどのような影響があるかを調べた
 写真1の収穫No.1と収穫No.3は皮を剝かずに洗濯機で洗浄した茎を用いた。
 収穫No.2は全量皮剥きを行った。
 収穫No.4は約30%を皮剥きし、約70%を洗濯機で洗浄した。


 収穫No.2は包丁で皮を剝いた。(写真2)
 この作業は大変時間がかかった。

 作業時間を短縮するために収穫No.4は中国製の手動ピーラーを使用した。
 しかし、この作業もかなりの時間を要するものであった。(写真3)
 


 表1に示すように皮の茎に対する重量比率は1.7%であった。
  
 収穫No.4で得た皮は図1に示すように低温で一定重量になるまで乾燥した。
 最終残存重量は52%であった。
  

 表2に加熱前の生ジュースと清澄ジュースの色調の比較を行った。


 差は僅かであるが皮剥きした生ジュースは皮を剝かないものよりR%とB%が高く、G%が低かった。(図2)
 

 
 表2に黒砂糖つくりのデータ一覧を示した。

 
  図3に示すように皮剥きをした方が浮遊および沈降灰汁の比率は低くなった。

   

 図4は皮剥き比率とサイホン重液の比率を示す。
 皮を完全に剝くと重液の沈降が悪くなる。
 皮剥き比率30%のときが、重液比率は最も低くなった。
 皮の中に灰汁の沈降を促進する(凝集作用のある)成分が含まれているかもしれない。

   

 清澄ジュースのBrixに対する乾燥黒砂糖の収率は皮剥き100%で低下した。

   

 表3に黒砂糖およびその水溶液の色調を比較した。
 また図6には黒砂糖1wt%水溶液(50倍希釈)の紫外可視吸収スペクトルを示した。
  



 図7に示すように皮剥き比率が大きくなるほど、黒砂糖T値が大きくなった。
 すなわち、皮を剝くことにより黒砂糖は明るい色になる。

   

 黒砂糖水溶液のOD280nm、OD420nmも皮を剝いた方が低くなる。
 ただし、最小値は皮剥き比率30-60%の付近にありそうである。

   

   


 最も注目したいのは、皮がある程度残っていた方が灰汁の沈殿がコンパクトになり、サイホン重液量が減少したことである。
この点については小スケールで皮剥き茎の比率を細かく変え、ジュース加熱後の沈降性を比較することとしたい。
 手動での皮剥きは非常に疲れる作業であり、特別な実験を除いては従来どおり茎を洗濯機で洗浄する方法を継続する。

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