283.サトウキビ茎表皮有無の生ジュース比率と加熱沈殿凝集性 2020年3月15日

 272節でサトウキビの茎の表皮(薄皮)を剝いて絞った生ジュースよりも剝かずに絞った生ジュースを混合した方が
加熱により発生する沈殿の凝集性が良くなることを述べた。
 本節では皮有り生ジュースと皮無し生ジュースを種々の比率で混合し、加熱したときの沈殿の凝集性を比較する実験を
小スケールで行った。

 写真1には実験に用いたサトウキビの生長経過を示す。これは223節で刈り取った後に残した蘖が生長したものである。



 2020年3月11日に刈り取ったサトウキビの茎を切断し、洗濯機で洗浄した。
 洗浄茎を2つに分け、一方はナイフで皮を剝いてから搾汁し、もう一方は皮を剝かないまま搾汁した。
 その状況を写真2に示す。


 皮有りと皮無しの茎から絞った生ジュースを写真3に示す比率で150mlになるように混合し、ホットプレートで3分間沸騰させた。
加熱液は室温で一夜静置し、濾過した。
 一夜放置後の画像を見ると、皮有り生ジュースの被リルが60%以上で沈殿の凝集性が良くなっていることがわかる。


 濾過ジュースを50倍希釈して紫外可視吸収スペクトルを測定した。(図1)
 

 濾過ジュースのスペクトルは270nm付近に特徴的な吸収ピークを有していた。(図2)

 
 図3に示すように濾過残渣の重量比(濾過残渣湿重量/濾過前の液重量)は皮有り生ジュースの添加率
が40%~80%で低くなった。この範囲での凝集性が良いと判断できる。


 

 図4には皮有り生ジュース添加率と濾液のOD270nmの関係を示す。



 図5にはOD270nmと濾液残渣重量比の関係を示す。
 濾液のOD270nmが高くなると沈殿の凝集性が良くなることを示唆している。




 以上より表皮に由来する成分が生ジュースの加熱したときに発生する沈殿の凝集性を促進
することが確認された。
その成分はおそらく270nmに吸収ピークを持つポリフェノールではないかと推定される。
 今後は表皮を分画し、どの分画物が凝集を促進するのかを明らかにしていきたい。


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