302. 黒豆黒糖麹発酵5 2020年7月10日
黒大豆と黒砂糖混合物の麹発酵において黒砂糖として①清澄ジュースから製造した通常の黒砂糖
②サイホンで上清を分離して残った重液から製造したものの比較を行った。
いずれの黒砂糖も第121節に記載した2017年No.5である。
重液から製造した黒砂糖は飴状/ガラス状となったが、長期間放置することにより通常の黒砂糖のサクサクした
形態となった。(第271節)
重液から製造した黒砂糖を使ってみようとした理由はサトウキビジュースのポリフェノールは重液に移行する
沈殿物(灰汁)に濃縮されており(第220節),発酵物にもより多くのポリフェノールが含有されると考えたからである。
培養方法は第260節と同じである。
写真1に培養準備経過を写真2に示した。培養温度は30℃である。
写真2を見ると麹の生育は第260節よりも良好であるが、これは新しく購入した種麹を用い、その活性が高かったためと考えられる。
発酵物は60℃で24hr乾燥した後粉砕してホワイトリカーによる抽出を行った。
粉砕物1.00gにホワイトリカー20mlを添加して1日に一度強く振盪し、3日間放置した。
その後、遠心分離で得た上清を蒸留水で10倍希釈しフォリン・チオカルト法で総ポリフェノールを測定した。
ホワイトリカーによる抽出経過を写真3に示した。
表1に重量とTPP分析結果を示した。
図1に培養物の相対重量変化を示した。
清澄ジュース黒砂糖と重液黒砂糖に差は認められなかった。
図2に乾燥発酵物あたりのTPP変化を示した。
培養前期は重液黒砂糖>清澄ジュース黒砂糖であったが、最終的には逆転した。
図3にTPP分析ブランクの紫外可視吸収スペクトルを示した。
270nm付近にポリフェノール由来と考えられるショルダーがあり、図4には培養時間とOD270nmの関係を示した。
TPPと同じく、培養前期は重液黒砂糖>清澄ジュース黒砂糖であったが、最終的には逆転もしくは同一であった。
図5にOD270nmとTPPの相関を示した。
同一OD270nmでは清澄ジュース黒砂糖の方が重液黒砂糖よりTPP含量は高かった。
重液黒砂糖から持ち込まれるTPPは発酵によって生成するTPPに比較すると極めて僅かである。
従ってTPP含量から見る限り、重液黒砂糖を原料に使用する必要はない。
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