304. サトウキビジュース放置時の微生物増殖 2020年7月19日
第283節ではサトウキビ茎表皮を除去して搾ったジュースと除去しないで搾ったジュースを種々の割合で混合して加熱処理を行い、発生する
沈殿物の凝集性を比較した。
その沈殿物を遠心分離で除去した上清を25mlのガラス製瓶に入れて室内で保管して、微生物が混入してどのように増殖するかを観察した。
上蓋は密閉せず、空気が入るように緩く締めた。
写真1から写真6にその外観の経過を示した。
最初のジュースは黄色透明であるが、しだいに白濁し、その白濁は4月末まで続いた。
5月になると液表面に微生物フロックが形成され、液内部の微生物も凝集してきた。
そのために固液分離が起こり液は有色透明となった。
図1に放置ジュースのRGB経過を示した。RGBの測定部分は写真の青枠で囲った部分である。
放置初期は白濁によりR,G,Bは上昇したが、その後減少に転じた。
図2に放置ジュースのT値(R+G+B)変化を示した。
T値の減少速度(暗色化速度)の大きさは No.2>No.5>No.6=No.3>No.4=No.1であった。
写真7は放置終了ジュースの固液分離の状況を示す。
写真8は微生物フロックの顕微鏡画像である。すべてカビの胞子か菌糸が観察された。
図3には放置前後のpHを示した。
いずれも放置によりpHは減少し、特にNo.2のpH低下が大きかった。
図4には放置前後のBrixを示した。
Brixの低下は予想以上に小さかった。
糖が炭酸ガスと水に分解する比率は大きくなく、大部分は有機酸に変換されて残存したと考えられる。
図5には放置後の遠心上清を50倍に希釈した紫外可視吸収スペクトルを示した。
図6にはサンプル別に放置開始前後の紫外可視吸収スペクトルを比較した。
図7は放置終了時と開始時の吸光度差のスペクトルを示したものである。
210nmから360nmの吸光度差はサンプルによって大きく異なっている。
代表として270nmの吸光度差を選び、皮有りジュース比率との関係を図8に示した。
吸光度差は皮有りジュース比率40%のとき最大となった。
図9は皮有りジュース比率と加熱残渣(湿)比率の関係を示す。
この図は皮有りジュース比率40%のとき最も凝集性が大きいことを示すものである。
図10には放置前後のOD270nm差と濾過残渣重量比の相関を示した。
放置前後のOD270nm差(紫外部吸収の増加)が大きい場合ほど生ジュース加熱時の凝集性が大きい
ことを示唆している。
皮有り無し有無の比率が加熱時の沈殿凝集性だけでなく、放置時の混入微生物による成分変化にも影響して
いるらしいことは極めて興味深い。
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