439. 黒色物質を移植したバガス 2023年6月29日

 本節は第394節の続きである。
写真1に室内の窓際に放置したときの経過写真を示す。
また表1には沈降層の色、RGBおよびG/R、B/Rの変化を示した。




 放置中の重量減少分は水道水の添加で補填した。
 図1には累積水添加量と累積重量減少の経過を示した。
 図2には累積重量減少から累積水添加量を差し引いた正味重量減少累積値の経過を示した。
 2023年の1月から正味重量減少はマイナスに転じた。すなわち正味重量は増加するようになった。
 正味重量の増加はシアノバクテリアによる炭酸ガスの固定によるものと考えるのが妥当である。




図3にpHの経過を示した。
従来、この懸濁液のpHは4以下であったが、今回の放置では上昇し、2022年10月には7を超えた。その後は7~8の間でほぼ一定となった。
今までの経験から静置培養の場合、シアノバクテリアが旺盛に増殖するとpHが上昇することが分かっている。
空気から懸濁液hの炭酸ガスの供給が追いつかなくなるからである。
図4にECの経過を示した。
pHが4から7に急上昇した期間にECは急降下し、pHが7を超えてからのECの低下は緩慢であった。



図5にはpHと正味重量減少累積値をプロットした。
正味重量が増加したのはpHが7以上になったときであった。
図6にはECと正味重量減少累積値をプロットした。
正味重量が増加したのはECが1.4未満の時であった。




図7に沈降層G/Rの経過を示した。
G/Rがピークになったのは、すなわち緑色が強くなったのは2022年12月~2023年1月であった。
この時期はシアノバクテリアの増殖が旺盛で、G/Rが上昇したが、その後はミネラルが不足しG/Rは下降に転じたものと考えられる。
図8に沈降層B/Rの経過を示した。
春になるとB/Rは一旦低下し、その後、再度上昇した。


図9は放置液(2023年6月24日)の濾過と再懸濁の過程を示したものである。
沪過残渣は顕微鏡観察を行い、再懸濁液はさらに観察を続けるべく室内窓際に放置した。


写真2.写真3に沪過残渣の顕微鏡画像を示した。
(1)黒色物質の本体であるすす病菌胞子は確認できたが、その数は減少し、破壊されているものも認められた。
(2)主体は球状および糸状のシアノバクテリアであり、以前より増加していた。
(3)カビの菌糸体も存在し、バガス繊維を分解しているのではないかと推察される。バガス繊維は定性的ではあるが減少していた。
(4)写真3⑧のような原生動物が確認された。




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