361.緑茶の紫外可視吸収スペクトル 2020年7月4日

 毎年5月になると私の生まれ故郷である三重県美杉町の従姉妹から新茶が送られてくる。
自分の茶畑で栽培した茶葉を近くの製茶工場で煎茶に加工したものである。(写真1)
 美杉町のある三重県は茶の生産量は静岡、鹿児島につぎ第3位である。(図1)
現在私が住む宮崎県は三重県につぐ第4位である。
 今回は美杉茶をつかって浸漬水温と浸漬濾液の紫外可視吸収スペクトルの関係を見た。


 

  乳鉢で磨り潰した茶葉(写真2),0.2gを温度を変えた水10mlに1時間浸漬し、濾過して浸漬濾液を得た。
 図2は浸漬したときの初期水温と1時間室温で放置したときの温度を示したものである。



 写真3に浸漬水温と浸漬濾液の色を示した。
 水温を2℃から90℃まで変化させても濾液の色に変化は見られなかった。
 色度を示すOD420nmも0.01で変わらない。



 図3に浸漬濾液の紫外可視吸収スペクトルを示す。
 210nm、270nmに明瞭なピークを320nm付近にショルダーを有しており、これは主としてカテキン類によるものと考えられる。
 図4に水温とOD210nm、OD270nmおよびOD320nmの関係を示した。
 いずれのODも水温50~60℃で最大値となった。



 
 図5に文献より引用した湯温と呈味成分の溶出率の関係を示す。
 還元糖、アミノ酸(呈味成分のテアニン、グルタミン酸など)は低温でも良く溶出され、カフェインとカテキンは温度の上昇とともに直線的に
 増加する。湯温が高くなると苦味が増えるのはそのためだ。
 図6は4種のカテキンの溶出量を湯温40℃と80℃で比較したものだ。
 80℃/40℃の溶出量比は以下のようになる。
 EC:0.65/0.40=1.63, ECG:0.70/0.30=2.22, EGC:2.40/2.10= 1.14, EGCG: 3.25/1.10=2.95
 EC,ECG,EGCCは80℃の溶出量が40℃より顕著に大きいが、EGCはそれほど差はない。
 各カテキンの化学構造については研究日誌第17節図5を参照されたい。



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