69. 長期間放置したサトウキビ葉の抽出液の色2(炭酸ソーダ水溶液による抽出) 2015年9月26日

(1)はじめに
  長期間放置した葉が一旦白色化して、その後、淡い糖蜜色になっていくのは腐植化がおこっているためでないかと考えた。
腐植物質(フミン酸、フルボ酸)を抽出するにはエタノール水溶液でなく炭酸ソーダ水溶液で抽出した方が良いので、ここでは濃度を変えた炭酸ソーダ水溶液による抽出を実施し、その抽出液の紫外可視吸収スペクトルを比較した。
 比較対照として新鮮な葉を使用しているが、新鮮葉はクロロフィルを含有していること、また水分が多いことが長期放置葉とは大きくことなっている。そこで新鮮葉、長期放置葉ともにエタノールでクロロフィルを除去したのち、乾燥し乾燥重量を揃えたサンプルを使用した。


(2)エタノール抽出によるクロロフィルの除去と抽出残差の乾燥
 
 破砕葉をエタノールで3回抽出し(写真1,写真2,写真3)、抽出残差を写真4のように乾燥した。



 エタノール抽出液は写真5に濃縮乾燥した。乾燥物の収量と収率を図1に示した。



(3)炭酸ソーダ水溶液による抽出

 図2に示した方法でエタノール抽出残差乾燥物の炭酸ソーダ水溶液による抽出を行った。



 最終抽出残差のRGBおよびT値を図3に比較した。
 炭酸ソーダ抽出後も長期放置は新鮮葉より暗色の程度が大きいことが分かる
 炭酸ソーダに溶解しない暗色物質が長期放置中に形成されていると思われる。



(4)炭酸ソーダ抽出液の紫外可視吸収スペクトル

 ①新鮮葉、長期放置葉ともに炭酸ソーダ濃度が高くなるほど吸光度は高くなった。
 ②新鮮葉、長期放置葉ともに波長500nm以上の吸光度はほぼ0であった。
 ③新鮮葉、長期放置葉ともに270nm、330nmにピークないしはショルダーが認められた。


 いずれの炭酸ソーダ濃度においても吸光度は長期放置葉が新鮮葉より高かった。


(5)代表的な波長でのOD比較

①OD420nmは炭酸ソーダ1%で飽和したが、 OD320nm、OD270nm、OD210nmは炭酸ソーダ濃度とともに直線的に上昇した。
②炭酸ソーダ 1%で長期放置葉/新鮮葉のOD比率は OD420nm 2.4倍、OD320nm 1.7倍、 OD270nm 1.9倍、OD210nm 1.9倍であった。


(6)考察
 サトウキビ葉の長期放置中に炭酸ソーダ水溶液可溶性および不溶性の腐植物質が増加することが示唆された。
この長期放置条件は風雨や直射日光を遮った室内においてのものである。
屋外においては雨で湿度が増加した場合に微生物の分解作用でもっと早く腐植化は進むことはまちがいない。
今後、屋外のサトウキビ畑においてサトウキビ葉の生長、枯れ死とともにエタノール抽出液および炭酸ソーダ抽出液の紫外可視吸収スペクトルがどのように変化するかを観察していきたい。


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