103.40℃恒温槽でのメイラード反応 2016年8月28日

(1)はじめに
 MSG-グルコース系のメイラード反応を恒温槽で行ったときの最大の問題点は恒温槽内の温度が均一でないため、サンプルの配置によって反応速度に差が生じることである
一方ドライバスを使用したときには反応速度のバラツキはないが、サンプル量が1.5mlに制限され十分な分析用サンプルが確保できないという問題がある。
そこで、今回は水を入れたプラスチック容器のなかにサンプル容器を入れ、そのプラスチック容器を高温槽に入れることで、反応速度を均一化できるかどうかを検討した。
反応温度は生理的温度に近い40℃を選んだ。この温度であれば水の蒸発も多くはなく、サランラップ等で覆うことによりコントロール可能であると判断した。


(2)方法

 水浴なしのサンプルの配置を写真1に水浴ありのサンプルの配置を写真2に示した。
 MSGとグルコースは別々に煮沸水で2Mになるように溶解し、室温まで冷却してからMSG水溶液:グルコース水溶液=8:2の割合で混合した。
 混合したMSG-グルコース水溶液20mlをガラス製サンプル瓶に入れ、写真1.写真2のように配置した。
 水浴の場合は蒸発を防止するためにサランラップで覆った。




(3)サンプルの色変化
 
  水浴なしの場合はサンプルの配置場所によって褐変の度合いに明らかな差が認められた。(写真3)
  水浴ありの場合はサンプルの配置場所によって褐変の度合いに差は認められなかった。(写真4) 写真を見るとNo.1からNo.9に進むにつれて暗くなっているが、これは写真撮影時の照明の影響であって一つ一つのサンプルを肉眼で見るとまったく差は認められなかった。




(4)サンプルのRGB測定
 
 写真2と写真3の垂直方向、水平方向の帯が交差する部分のRGBを測定し表1と表2に示した。


(5) T値(R+G+B)の比較

 水浴なしのT値を図1に示した。後述するように配置場所によって差が見られた。
 水浴ありのT値を図2に示した。こちらは写真撮影時の並べて方向によってT値に差があったが、配置による差は認められなかった。



T値の標準偏差を図3に示した。水浴なしの標準偏差は水浴ありより大きく、特に反応80hr以前の差が大きい。



 平均値に対する相対T値の配置による差を表3に比較した。
これによれば、水浴なしの場合は右側、後方ほど褐変が起こりやすくなることがわかる。



 平均T値の水浴なし/水浴ありの比率を図4に示した。
 これからも水浴なしの場合は右側/後方ほど褐変は起こりやすいと言える。

 


(6)平均R、G、Bの経時変化
 
 図5によればR,G,Bともその低下速度は水浴あるが水浴なしより小さい。
水浴の温度は40℃より低くなっている可能性がある。(後日水浴の温度を測定したところ、恒温槽を40℃に設定したときの温度は39℃であった。)
水浴ありの場合、R,G,Bが低下しはじめるのは70hr以後である。それ以前は可視部に吸収のある成分の生成には至っていない。




(7)まとめ

①40℃恒温槽に水浴を設置すれば、サンプル配置場所による反応速度の差はなくなる。
 今後、水浴を用いてMSG-グルコース系のメイラード反応を抑制する成分の検討をする。
②注意点は以下のとおりである。
 *サンプルの写真撮影のとき照明が均一になるようにする。
 *水浴の温度を測定する。
 *無菌操作は当実験室ではできないが下記の工夫をする。
  サンプルは加熱したものを冷めないうちにMSG-グルコース溶液に添加する。
  サンプルを添加するときは消毒用アルコールに浸したピペットを使用する。
  アルコールの水置換は煮沸水で行う。
③サンプルの経時変化は写真撮影以外に腐敗臭の発生、沈殿物の有無を記録する。

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