114.サトウキビジュースの放置時間と濃縮乾燥物の着色度 2016年12月4日

(1)はじめに

 第84節で「搾ったジュースを加熱(ポリフェノールオキシダーゼ失活と澱除去のため)するまでの放置時間と黒砂糖の着色度には強い正の相関がある」ことを記した。
 本節では、ジュースの放置時間を変化させたとき、ジュースの濃縮乾燥物の着色度がどのように変わるかを検討した。



(2)ジュースの調製

 ジュースの調製過程を写真1.2,3に示した。




(3)ジュース放置試験の経過
 
 放置試験経過データを表1に示した。


 図2にpH,温度、Brixの変化を示した。
 ①加熱前ジュースのpH
  放置3hrまでに急激に低下、その後ほぼ一定となった。
 ②清澄ジュースのpH
  加熱によりpHは低下し、放置時間によって大きくは変わらない。
 ③温度変化
  加熱前ジュース:16.5~17.5℃であった。
  清澄ジュース:室温の上昇に応じて上昇した。
 ④Brix変化
  加熱前ジュース:放置中若干上昇した。
  清澄ジュース:加熱時間は10分に固定したが、ガスコンロの火の強さが実験ごとに異なってしまい、大きくばらついた。
  Brixの絶対値8g)は加熱前ジュースと加熱後ジュース=濃縮前ジュースでは大きな差があるが、この原因は除去した澱と取扱ロスによる。
 

  図3に加熱時の重量変化を示した。
  2hrおよび12hrのサンプルは弱火になってしまい、他のサンプルより重量減が少なかった。
 ただし、10分間の煮沸は実施しているのでポリフェノールオキシダーゼは失活しているはずである。

 


(4)濃縮液乾燥物のRGB


 濃縮液をシャーレにとり60℃で18hr乾燥させ、そのRGBを測定した。(表2)



 図4に示すように、Rrは直線的にわずかに低下。G、B、T値は6hrまでは低下したが、それ以後はほぼ一定となった。
 




(5)加熱前ジュースの紫外可視吸収スペクトル

 写真4に示した各サンプル1.5mlを遠心分離した上澄を50mlの水に溶解して紫外可視吸収スペクトルを測定した。
遠心分離しても白濁物質は沈降せず、その濁度物質が吸光度に加算され、見掛けより吸光度が高くなった。
図5に吸収スペクトルを図6にOD270,330,420の変化を示した。
 放置時間とともにODは直線的に増加した。

 
 
 


(6)濃縮乾燥物の紫外可視吸収スペクトル

 表2の濃縮乾燥物を熱湯で溶解したのち、水で100mlに溶解した。
 溶解液をテュッシュペーパーで濾過することにより、濁度は完全になくなった。
 この濾液の紫外可視吸収スペクトルを測定した。
 図7のスペクトルは固形分濃度を10mg/dlに換算して示したものである。
 
  図8にOD420、330,270の相対値の変化を示した。
  1hrの値が異常に高く、9hrの値が異常に低いので、これらを除外するとOD420は放置時間とともに増加した。
  OD330、OD270の増加はわずかであった。
 


(7)まとめ

 OD値がばらついていて理想的なデータは得られなかった。
 実験スケールが小さすぎて、黒砂糖を作るまでにいたらなかったのが原因かもしれない。
 いずれにせよ、搾ってから加熱までの放置時間が長くなると濃縮乾燥物の着色度は高くなる傾向になることはまちがいない。
 しかし、その着色度の上昇は予想より小さいものであった。

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