86. サトウキビ表皮の水抽出 2016年4月19日

(1)はじめに

 サトウキビの茎を芯側と皮側に分別して黒砂糖をつくった場合、黒砂糖の色度は皮側>芯側である。
これより黒砂糖の色素は主としてサトウキビの表皮に由来すると考えられる。(82節参照)
 今回はサトウキビの表皮を水で抽出し、抽出液を10分間煮沸、12hr放置という黒砂糖つくりと同じ条件で処理してその紫外可視吸収スペクトルを測定した。
また、表皮は新株と旧株から採取して比較してみた。


(2)表皮の採取

 「84. 2016年の黒砂糖つくり 2 (2015年に刈り残した株から) 2016年4月12日」のNo.9の洗浄株の一部から写真1のように表皮をナイフで削り取った。



(3)表皮の水抽出

 写真2に示すようにジューサーを使用して水抽出を行った。
抽出濾液の色は明らかに旧株>新株であった。


(4)抽出濾液の加熱

 抽出濾液を温度230℃に設定したホットプレートで加熱した。
加熱時の温度変化、写真、RGBの変化を図1に示す。
新株ではRとGはほとんど変化せず、Bが低下した。
旧株ではR,G,Bともに低下した。
加熱中の水分蒸発は約20%あり、濃縮によるRGBの低下もあるが、それ以上に色素の質が変わっていると言える。


(5)加熱濾液の放置
 
 加熱後室温で放置してもサトウキビジュースのような沈殿の凝集は認められなかった。(写真3)
沈殿はなく、液はやや濁っていた。



(6)抽出液の紫外可視吸収スペクトル

 紫外可視吸収スペクトルを測定した抽出濾液の重量は新株、旧株ともに茎重量に対して59%であった。(表1)
従って吸光度そのまま茎重量あたりの値として比較することができる。


 
  新株、旧株とも270nm付近にピークを有していた。
 いずれの波長においても旧株の吸光度が新株より大きく。特に紫外部域でその差は顕著であった。
 


(7)おわりに

 黒砂糖の色素は主として表皮に由来するという可能性がいっそう高くなった。
旧株からつくった黒砂糖は新株からつくったものよりも紫外部の吸収が強いのも、表皮由来の色素の差で説明することができる。


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