293. 水槽試験軽液再放置液の石灰処理 2020年5月27日

 第257節では水槽脱色試験(1年間)で取得した1次濃縮軽液を水道水で25倍に希釈してペットボトルに入れ室内に520日間保存したことを述べた。
本節ではさらに保存を続行し、合計約2年間で打ち切り消石灰による脱色試験を実施した。

 その実験経過を写真1に紫外可視吸収スペクトルを図1に示した。
 単に室温に放置しただけでは、2年かけても色度は減少せず、むしろ増加したが、消石灰処理では瞬時に色度を低下させることができた。



  放置開始時のODを100%としたときの相対ODの波長による変化を図1に示した。
 燐酸0%の場合(No.1,No.5,No.9,No.13)および尿素0%、燐酸0.04%(No.4)の場合に2年間の放置により可視部の相対ODは僅かに低下したが、それ以外の条件では増加した。
 


 図3に各尿素濃度における燐酸濃度とpHの関係を示した。
 放置前後とも燐酸濃度とともにpHが低下するのは当然であるが、尿素が多くなるほどpHは高くなった。
 放置中に尿素が分解してアンモニウムイオンとなり、これが燐酸と反応して燐酸アンモニウムとなったと考えられる。
 燐酸アンモニウムはメイラード反応を促進するので、図2で燐酸濃度が高くなるほど(すなわち燐酸アンモニウム濃度が高くなるほど)相対ODは高くなったのであろう。
 尿素0%、燐酸0.04%の場合はpHが低く、メラノイジン色素が等電点沈殿したものと考えられる。
 消石灰の添加量はどのサンプルも一定であり、添加直後のpHは10を越えているが、サンプル間に差がある。


 図4に石灰処理による燐酸濃度および尿素濃度とpH上昇の関係を示した。

  

 図5と図6に石灰処理前後の相対OD420nmを示した。
 尿素濃度が高くなると燐酸濃度が低いときの相対OD420が高くなることがわかる。

 

  

 図7には石灰添加前後のpHと相対OD420nmの関係を示した。
 脱色率は石灰添加前のpHが低く、石灰添加後のpHが高いほど大きいことが分かる。

 2年間放置したペットボトルの内壁には緑色の光合成微生物が付着していた。(写真2)


 内壁付着物(緑色部分)のRGBを表1にRGB%を表2に示した。



 図8に放置終了時のpHと内壁付着物のG%の関係を示した。
 pH6.5~6.8でG%が最大となった。

  

 結論として以下のことが言える。

 ①2年間の室温放置で脱色はほとんど認められず、むしろ色度の増加が認められた。
 ②緑色光合成微生物の繁殖はわずかに認められたが、その脱色作用は確認できなかった。
 ③消石灰による脱色効果は圧倒的であり、尿素、燐酸無添加の残存OD420nmは10%であった。

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