309.黒豆黒糖麹発酵物抽出液のメイラード反応抑制 2020年8月30日

(1)要約

  第302節で調製した黒大豆と黒砂糖の混合物の豆麹による発酵物を①ホワイトリカー(室温、3日間)と ②熱水(沸騰、30分)で抽出した。
 抽出液のMSG-グルコース系でのメイラード反応抑制作用を見たところ
 ①ホワイトリカー抽出液ではメイラード反応反応抑制作用は認められず
 ②熱水抽出液では明らかなメイラード反応抑制作用が認められた。


(2)ホワイトリカー抽出液の実験

 ホワイトリカー抽出液は第302節で総ポリフェノール測定に用いたものと同じである。
 MSG+基質グルコース水溶液は 2M MSG 水溶液と 2M グルコース水溶液を4:1の割合で混合したものである。
 それぞれ121℃*15分でオートクレーブで殺菌し、冷却してから混合した。
 反応液は20mlを殺菌したガラス製サンプル瓶に入れ、密閉したプラスチック容器の水浴に入れた。
 プラスチック容器は40℃にコントロールしたインキュベーター内に置いた。
 写真1に反応液の組成と反応液の色調変化を示した。
 水浴の温度変化を図1に示した。




   

 写真1ではホワイトリカー抽出液を添加したものと添加しないものに色調の差は見られなかった。

図2に5℃に保存した反応液の図3には40℃で10日間インキュベートした反応液の紫外可視吸収スペクトルを示した。




図4は図3から図2の吸光度を差し引いた吸光度差スペクトルである。
吸光度差は波長310nm付近で最も大きくなった。
図5はホワイトリカー抽出液無添加を100%としたときの相対吸光度差スペクトルを示した。



 図6にホワイトリカー抽出液の添加量と波長310nmにおける相対吸光度差の関係を示した。
いずれも抽出液添加量の増加とともに相対吸光度差は上昇し、メイラード反応抑制作用はまったくなくむしろ促進作用が認められた。





(3)熱水抽出液の実験

 熱水抽出液は図7にようにして調製した。


 写真2に反応液の組成と反応液の色調変化を示した。
 図8には水浴温度の変化を示した。


    

 写真7を見るとインキュベーション8日以後は抽出液無添加より抽出液添加の方が色が薄くなっていることがわかる。

 図9、図10に反応液の紫外可視吸収スペクトルを示した。




 図11,図12に吸光度差スペクトルを示した。
 波長310nm付近に吸光度差のピークがあった。

 

 図13,図14に抽出液無添加を100%としたときの相対吸光度差スペクトルを示した。

 

 図15に熱水抽出液の添加量と相対吸光度差の関係を示した。
 これより熱水抽出液には明らかにメイラード反応抑制作用が認められた。

   


(4)所見
 当初、ホワイトリカー抽出液にはメイラード反応抑制作用があることを期待していたのだが、その結果は完全に期待を裏切った。
 ここであきらめようかとも考えたのだが、もしやと思い熱水抽出液での実験を行ってみた。
 その結果、熱水抽出液にはメイラード反応抑制作用があることがわかりあきらめなくてよかったと思う。
 今後の進め方は以下の通りである。
 ①熱水抽出液の乾燥固形分、紫外可視吸収スペクトル、総ポリフェノールの測定。
 ②Y-2の熱水抽出液での添加濃度の低いところでのメイラード反応抑制効果の確認。
 ③発酵のスケールを上げて、熱水抽出物を多量に取得し、分子量分画等を実施してみる。

研究日誌の目次に戻る