397.金柑皮のホワイトリカー抽出 2022年7月31日

 糖蜜色コレクション 第444節で収穫した金柑を冷凍保存したことを述べた。
今回はその冷凍した金柑を解凍し図1に示したように皮を分離した。


 分離した皮はミキサーで破砕し、図2に示すようにホワイトリカーに浸漬した。


 ホワイトリカーへの浸漬は6月8日から7月27日までの49日間実施し、図3に示すように濾過して沪液を得た。
沪過時のマスバランスを表1に示した。



                    
 沪液は図4に示すようにプロパンガスコンロで加熱濃縮した。
 この濃縮は1次濃縮とし、濃縮倍率は8.09倍であった。


             
 一次濃縮経過データを表2に相対重量の経過を図5に示した。

               
 図6は1次濃縮時の色変化、図7はRGB変化である。
     
 1次濃縮液はステンレストレイに入れホットプレートで加熱し、2次濃縮を行った。その経過を図8に示した。
プレートに1次濃縮液の全量は入らないので段階的に供給を行った。
図9に累積供給量の経過を示した。

                      
 
 2次濃縮の濃縮倍率は1.47倍で、表3に示すように総濃縮倍率は約12倍であった。


                          
 2次濃縮液を図10に示すように、60℃で約15hr乾燥したが、重量減少率は(169-167)/169=1.2%であった。
60℃え蒸発するような水分はほとんど残っていなかったと考えられる。
得られた60℃乾燥物は蒸発乾固物と考えて良い。
 蒸発乾固物は極めて粘度の高い水飴状であった。

                 
 水飴状の蒸発乾固物を-20℃で冷却してみた。
 冷却により固体状になり破砕できるようになるかもしれないと考えたからである。
 冷却前後の状態を図11に示した。
 表面を見ると冷却により固化したように見えたが、撹拌すると水飴状のままであった。

                 
 図12に冷却物の状態を示した。

                 
 冷却物を室内に放置するとトレイ中央に集めたものが、トレイ全体全体に広がった。
 図13にその変化を示した。
 温度の上昇により流動性が上がったためである。




 図13のトレイ全体に広がった物をエキスペーストと呼称し、そのエタノール-水溶液への溶解性を調べた。
その結果を図14に示した。
 エタノール濃度25%以下ではエキスペーストは完全に溶解し、エタノール100%では溶解しなかった。
 エタノール50%と75%では溶解するものと沈殿として析出するものが認められた。

 多量の沈殿の析出が認められたエタノール75%添加液を遠心分離して沈殿と上清に分離した。(図15)

       
 図16に上清と沈殿の水溶解液の外観を比較した。

         
 図17に上清と沈殿溶解液の紫外可視吸収スぺクトルを示した。
上清は220nmと280nm付近に沈殿溶解液は200nmと280nm付近にピークが認められた。
 図18はOD280nmを100%としたときの相対吸光度スペクトルを示した。 

 金柑等の柑橘類の皮にはヘスペリジンが含まれていると言われており、その紫外可視吸収スペクトルを探したところ文献1があった。
文献2にはヘスペリジンの化学構造と生理作用を示した。

  
 
 文献1のヘスペリジン標準物質のスペクトルからOD280nmを100%とした相対吸光度を計算し
 上清、沈殿溶解液と比較して図19に示した。
 上清、沈殿溶解液とも280nmにピークがあるものの、上清は200nm以下の吸収が低すぎ
 沈殿溶解液は高すぎた。
 おそらく両者にヘスペリジンは含有されているものの極めて純度は低いと考えるべきであろう。

   

 今後、エタノール濃度50%と100%の間を細かく分けた分別沈殿を試してみたい。

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