597. ミカンの放置による腐植化 2024年8月24日

 第518節では、木になっているミカンの果実の色変化について記録した。
本節ではそのミカンの皮を剥き、皮と房を分離して皿に入れ室内に放置しその変化を観察した。
 写真1は2023年3月4日から8月14日までの163日間の経過である。。
 房には黒カビが生え、果汁を失っていった。
 一方、皮は水分の蒸発により収縮していったが、カビの繁殖を明確に認めることはできなかった。




 写真2は2023年8月21日から2024年1月2日までの135日間の経過である
 2023年8月から11月の間、サンプルの外観にほとんど変化は見られなかった。
 水分が完全に蒸発し、もはや微生物が生育できないほど乾燥してしまったからである。
 そこで11月13日から水の添加を開始した。
 するとカビの生育が再開し、房の袋の分解が起こった。
 皮はまだその形状を保っていた。


 写真3は2024年1月9日から2024年4月23日までの105日間の経過である。
ついに皮にもカビが生育しはじめ、4月9日にスプーンで撹拌するとドロドロになった。

 
写真4は4月30日から2024年8月6日までの98日間の経過である。
水添加は1週間に一度実施してスプーンで撹拌した。
水添加前はパサパサ、水添加後は泥状になった。


 2024年8月13日に放置を終えた。
 放置の開始は2023年3月4日、終了は2024年8月13日であるから、総放置日数は528日であった。
 ①ミカンの花の蕾を見つけたのは2022年4月10日である。(第461節
 ②ミカンの実が落下したのは2023年3月3日である。
 従ってミカンの実が熟すまで327日である。
 すなわち全観察期間は生きている期間(327日)+死んで微生物に分解あれる期間(528日)=855日であった。
 
 写真5に最終ミカン残渣の回収経過を示した。

 写真6は最終残渣の顕微鏡画像である。
 ミカンと微生物由来と考えらえる繊維や顆粒が観察された。


 図1は乾燥粉末残渣を0.6wt%のNaOHで抽出し、水洗浄を切り返したときの手順を示した。



   図2は抽出次数と抽出沪液の色調(RGB)を比較して示した。

                       
  1次抽出沪液に塩酸を添加し酸性にしてみた。
  腐植化がおこりフミン酸ができていたら酸性で析出してくるはずである。
  pH調整状況を図3に示した。
             
 予想通り酸性にすると沈澱が生成したので、これを図4のように分離した。


 
  図5は1次抽出液と酸性母液の紫外吸収スペクトル、図6は可視吸収スペクトルである。
 両者の差は沈澱(フミン酸相当)の吸収スペクトルに近いと見てよい。
 図6に示す通り、1次抽出液の可視部の暗色は大部分が沈澱に由来する。




 図7には1次抽出液の吸光度を100%としたときの酸性母液の吸光度比率の波長による変化を示した。
 吸光度比率は270nmの38%をピークにして、波長が長くなるとともに低下し、530nmでは0%となった。



 写真7には1次抽出沪液、酸性母液および酸性沈澱の外観を比較した。

            

 写真8は4次抽出残渣の、写真9は酸性沈澱(湿サンプル)の顕微鏡画像である。
 4次抽出残渣は生物由来物質の痕跡があるが、酸性沈澱にはその痕跡はない。


 写真10は乾燥し乳鉢で粉砕した4次抽出残渣と酸性沈澱の顕微鏡画像を比較したものである。

 図8は乾燥粉末残渣の固形分の内訳である。
 約半分の固形分が0.6%NaOHで抽出され、母液に43%,沈澱に5%が移行している。
 母液に移行した暗色物質はフルボ酸に相当し、沈澱したものはフミン酸に相当する。


 フミン酸相当の沈澱画分はフルボ酸相当の溶解画分より固形分比率は小さいものの、暗色度の比率は圧倒的に高かった。


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