125. 1年間および2年間刈り取らなかったサトウキビからの黒砂糖 2017年2月23日
(1)はじめに
1年間刈らずに残したサトウキビからつくった黒砂糖については75節と84節に記載した。
ここでは2年間刈らずに残したサトウキビから黒砂糖が作れるかどうかを検討した。
(2)2年間刈らずに残したサトウキビの生育状況
85節に記載したようにD1株、G1株、H1株は2年間刈り取らずに放置した。
このうちG1株について今年は刈り取りを行った。D1株、H1株については今年も刈り取らずに放置することにした。
写真1はH1株とG1株の生育経過である。
(3)G1株の分別刈り取り
写真2は刈り取り直前のG1株である。(2017年2月14日)
写真3は分別刈り取りを行った今年、昨年、一昨年のサトウキビの茎である。
(4)茎の外部、内部の様子
今年の茎はみずみずしく組織も軟らかいが、昨年、一昨年と古くなるにつれて水分を失い硬くなてちた。
茎の中心部に空洞ができ、そこに菌糸体(おそらくスエヒロタケ)が繁殖していた。(写真4)
(5)洗浄前、洗浄後、搾汁後の茎の様子(写真5)
(6)ジュースからの黒砂糖つくり(写真6)
一昨年の茎からはジュースがほとんど得られず、わずかなジュースを60℃で24hr乾燥して固形分を得た。
(7)各種データの比較
①茎の収量
古い茎ほど本数は減少し(図1),茎重量も著しく減少した。(図2)
古い茎ほど1本あたりの重量が減少した、(図3)
②ジュースの収量
ジュースの収量は今年のジュース重量に対して昨年で11%に一昨年で0.6%に大きく減少した。(図4)
③ジュースのBrix
Brix濃度は昨年株で今年株より高くなっていたが、一昨年株では大きく低下していた。(図5)
④ジュースのpH
昨年株で低下し、一昨年株でわずかに再上昇していた。(図7)
⑤清澄ジュース重量
一昨年株の清澄ジュース量はごく僅かで、黒砂糖つくりには至らなかった。(図8)
今年の清澄ジュースは甘い糖蜜臭がしたが、昨年のものは醤油のような有機酸臭がした。
⑥黒砂糖収量
昨年株は今年株の10%の収量、一昨年株では黒砂糖はつくれなかった。(図9)
⑦洗浄茎に対するジュースとバガスの収率
古い茎はジュース収率が大きく低下し、バガス収率が増えた。(図10)
(8)ジュースの色(写真7)
色の暗さは昨年>一昨年>>今年となった。
B値はいずれも同じであるが、R値とG値に大きな差がある。
(9)黒砂糖または蒸発乾固物水溶液の紫外可視吸収スペクトル
写真8のような水溶液を調製し、これらをさらに10倍希釈して紫外可視吸収スペクトルを測定した。
図11は固形分100mg/dlに換算したスペクトルである。
全体として1年の放置で吸光度は大きく上昇し、2年の放置では減少に転じた。
一昨年の可視部の吸光度が高いのは濁度の影響である。
最大吸収波長は200nm付近の第1ピークと280nm付近の第2ピークがある。
第1ピークは昨年と一昨年で大きな差はないが、第2ピークは昨年(1年放置)で増加した吸収が一昨年(2年放置)で減少していた。
(10)終わりに
今回の1年放置株のジュース/洗浄茎収率が11%(図10)は84節の結果とはかなり異なっている。
84節ではジュース収率は40%は維持していた。
その大きな違いは84節の1年放置株にはスエヒロタケ菌糸体が認められなかったことである。
おそらく、G1株はスエヒロタケ菌糸体により養分、水分が奪われてしまったのではないかと考えられる。
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