129.(続)E60透析液のメイラード反応抑制作用 2017年4月6日
(1)はじめに
本節は112節の続きの実験結果である。
黒砂糖水溶液にパン酵母を通気培養し、酵母を分離した濾液をエタノール抽出で分画し、エタノール60%(E60と称する)を分画分子量3,500の透析膜で分離したところ、透析膜を通過した外液側にメイラード反応抑制作用の強い成分が移行していると考えられた。
そこで、今回は上記の外液を分画分子量1,000の透析膜で分離し、外液と内液のどちらに目的成分が移行するかを確認することにした。
(2)メイラード反応抑制作用測定サンプルの調製
①凍結保存していた分画分子量3,500の透析外液44.1gを解凍し、透析チューブ(Spectra/Por7.Dialysis Membrane
Pre-treated RC Tubing MWCO:1kD)に充填した。(写真1)
②これを950gの水道水で室温にて19hr透析した。(写真2)
③透析内液と外液を60℃での乾燥固形分を測定した。(写真3)
④透析内液と外液を固形分2%になるように煮沸濃縮した。(写真4)
⑤メイラード反応抑制作用を測定するためのサンプルを写真5に示した。
(3)メイラード反応抑制作用の測定方法と経過
方法は112節と同じである。
表1に実験条件表を示した。
40℃水浴で加熱したときの色変化を写真6に示す。
(5)反応前後のRGBの減少(写真7,図1)
①外液、内液とも基質なしではRGBの減少(暗色化)はほとんどない。
②一方、基質のみの場合はRGBの減少(暗色化)は大きい。
③透析外液の添加とともにRGB減少は小さくなった。
④透析外液の添加とともにRGBの減少は起こらなくなった。
(6)反応前後の紫外可視吸収スペクトル
液を50倍に希釈したときの紫外可視吸収スペクトルを図2~1図10に示した。
(7)サンプル無添加の吸光度増を100%としたときの相対吸光度増(図11,12)
①透析外液は添加率50%で最もメイラード反応が抑制され、それ以上の添加では増加に転じる。
②透析内液は添加率の増加とともにメイラード反応は抑制される。
③メイラード反応抑制作用のある成分は内液に多い。すなわち分子量1,000~3,500の範囲にある。
(8)まとめ
図13に示すように、黒砂糖には40℃でのMSG-グルコースのメイラード反応を抑制する物質が存在し、60%エタノールで抽出される分子量1,000~3,500のの画分に多いと言える。