130. E60 分子量1,000~3,500画分のpHと吸光度 2017年4月7日
(1)はじめに
前節で述べたように黒砂糖に存在するメイラード反応抑制成分は60%エタノールで抽出され、透析による分子量が1,000~3,500に最も多く存在すると考えられる。
本節ではその画分の紫外可視吸収スペクトルがpHによってどのように変化するかを実験した。
(2)方法
表1のようにリン酸と炭酸ナトリウムを混合して種々のpHの溶媒を調製し、この溶媒でサンプルを100倍に希釈して紫外可視吸収スペクトルを測定した。
図1に示すように波長240nm以下では溶媒に強い吸収が認められた。
一方240nm以上では吸収はほとんど水と同じであった。
そこで、240nm以上の溶媒希釈サンプル吸光度と溶媒吸光度の差を用いてpHの影響を評価した。
(3)紫外可視吸収スペクトルに及ぼすpHの影響
全体としてpHが高いとき吸光度は高くなり、pHが低いとき吸光度は低くなった。(図2)
水溶媒pH7.5をベースとした示唆吸光スペクトルを図3に示した。
これによると以下の特徴が認められた。
①400nmの吸収はpHが高いと上昇し、pHが低いと下降する。
②pHが低いときは300nm付近に低いピークが、pHが高いときは250nm付近に高いピークが認められた。
水溶媒pH7.5を1005とした相対吸光度のスペクトルを図4に示した。
pHの影響は360nm以上の長波長で大きくなる。
すなわち、pHが高いと相対吸光度は上昇し、pHが低いと相対吸光度は下降する。
このことは図5においても明瞭に示された。
(4)フルボ酸との関連
分子量の大きさ、その糖蜜色、pHによる吸光度の変化から、当該分画に存在するのは腐植物質の中のフルボ酸と類似している。
フルボ酸の定義とそのモデル構造を図6に示した。
また腐植物質については76節を参照されたい。
フルボ酸について以下に3冊の書籍を紹介しておく。
フルボ酸には種々の好ましい生理活性がある。
(5)今後の進め方
私は黒砂糖に存在するメイラード反応抑制作用を有する物質はフルボ酸と総称される物質の一つではないかと思う。
糖蜜色のこの物質にはおそらく生理的条件下での抗糖化作用があり、抗老化素材として利用できるのではないだろうか。
今後、黒砂糖からもっと多くの目的成分を調整し、評価方法を考えてみたい。
研究日誌の最初のページに戻る