139. カビ付き黒砂糖の再生 2017年7月7日
(1)はじめに
黒砂糖は適当な湿度と温度の外気に放置するとカビが発生する。(第100節 黒砂糖のカビ)
写真1にようなプラスチック容器に長期間黒砂糖を保管した場合、写真2にようにカビが発生した。
今回はこのようなカビ付き黒砂糖を再溶解して再濃縮して再生することを試みた。
(2)再生手順
再生手順と重量の経過を図1に示した。
(3)黒砂糖の溶解と残渣分離(写真3)
① カビ付き黒砂糖を溶解して加熱したときの臭いは味噌や醤油のような発酵臭であり。もはや黒砂糖の甘い香りはなかった。
② カビ付き黒砂糖の一部は液化していた。シュクロースがグルコースとフルクトースに転化され、糖の溶解度が上昇したためではないかと思う。
③ 加熱後、静置すると残渣が底部に沈降した。
(4)残渣分離上澄からの黒砂糖の再生(写真4)
上澄液1を写真4のように濃縮し、さらに2次濃縮と冷却を経てステンレスパットに写した。(写真5)
通常、パットにいれた2次濃縮液は約1hr放置すれば柔らかく固まり、ナイフで切り込みをいれることができる。
しかし、再生黒砂糖は1夜放置しても固まらず、飴状であった。
ナイフを入れてもすぐに元に戻ってしまった。
さらに、もう一日放置しても固化しなかったため、約50℃に加温して流動性を持たせた上で、プラスチック容器に充填した、(写真6)
結局、カビ付き黒砂糖はケーキ状の黒砂糖として再生できず飴状にしかならなかった。
プラスチック容器に充填した飴状黒砂糖を室温に放置し、再度カビが生えるかどうかを観察することにした。
今回はシリカゲルを入れ、かつ密封したのでカビが発生しないことを期待している。
(5)残渣の回収
残渣の回収経過を写真7に示す。
最終的に糖蜜色の乾燥粉末を得た。
(6)黒砂糖に繁殖した微生物
黒砂糖に生えたのは「カビ」であると考えていたが、顕微鏡で見てみると写真8に示すように出芽酵母であった。
高濃度の糖を好む耐糖性酵母であると考えられる。
(7)新黒砂糖と再生黒砂糖の比較
①色(写真9)
明らかに再生黒砂糖の色が濃かった。
②60℃加熱乾燥
新黒砂糖は乾燥中に外観の変化はなかったが、再生黒砂糖は飴状から液状に変化し、最終的には流動性を失いまた飴状となった。(写真10)
60℃での固形分(残存相対重量)は再生黒砂糖が新黒砂糖よりやや高かった。(図2)
③紫外可視吸収スペクトル(図3)
再生黒砂糖は明らかに280nmのピークが高くなっていた。
耐糖性酵母が黒砂糖から作ったものか、耐糖性酵母の内容物が煮沸時に漏洩したものかのどちらかでると考えられる。
(8)おわりに
再生黒砂糖はケーキ状にすることはできず飴状にしかできなかった。
しかし、味噌や醤油様の臭気は再生中に消失し、黒砂糖の甘い香りがした。また味も黒砂糖の味であった。
今後、再生黒砂糖をパン酵母で脱糖して280nm吸収物質の消長を見る。
また乾燥残渣(耐糖性酵母)についても炭酸ソーダ水溶液による抽出を実施して紫外吸収スペクトルをとってみる。
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