142. カビ付き黒砂糖シロップの放置 2017年8月9日
(1)はじめに
第77節「サトウキビの根こそぎ収穫」においてサトウキビの新株と旧株から調製した黒砂糖について記載した。
これらの黒砂糖を1年半保存したところ表面にカビが発生していた。
この黒砂糖に水を加えシロップにしてステンレスパットに入れて放置し、カビの生育状況を観察した。
(2)使用した黒砂糖(写真1)
(3)黒砂糖の溶解(写真2)
黒砂糖100に20重量%の水道水を添加して、室温でミキサーで溶解した。
新株から調製した黒砂糖は容易に溶解してシロップになったが、旧株から調製した黒砂糖はミキサーで完全に溶解せず、むしろ砂糖の結晶が成長した。
そこで旧株の黒砂糖については砂糖の結晶を除いた濾液を用いた。
(4)シロップ放置経過写真(写真4,5,6,7,8)
シロップを放置すると表面にカビが生育し、最終的には全表面を覆う被膜を形成した。
途中で被膜を破ってシロップに混合しても、再び表面は被膜で覆われた。
(5)コロニーの表面被覆状態(図1)、気温(図2)、相対重量変化(図3)
表面被覆が進行、すなわちカビの生育が旺盛になる時期は気温が25℃を越える時期である。
また1回目の生育はまだ水分が十分にある時期であるが、その後蒸発により水分が減少し、2回目、3回目は
重量が上昇する時期に一致している。
重量の上昇は雨が続き、湿度が高くなる時期である。
(6)カビの顕微鏡写真(写真9)
カビは普通の糸状菌ではなく酵母であった。
サトウキビ新株の黒砂糖シロップに生えた酵母は大きい球状であり、旧株の黒砂糖シロップに生えた酵母は前者より小さい楕円形であった。
(7)まとめ
黒砂糖シロップを放置すると表面に皮膜を形成する酵母が生育した。
表面のみに生育するところから、好気性の耐糖性の酵母である。
新株黒砂糖と旧株黒砂糖で生育する酵母の種類が異なっていた。
新株黒砂糖と旧株黒砂糖では紫外可視吸収スペクトルが明瞭に異なっており、その成分の違いにより繁殖する酵母の種類も異なるものと考えられる。
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