145. MSG-グルコース系メラノイジン 2017年8月22日
(1)はじめに
第103節「40℃恒温槽でのメイラード反応 2016年8月28日」での反応液をペットボトルに入れて室温で約1年間放置した。
1年間の放置により液は暗色度を増したが、腐敗は認められなかった。
フルーツ臭を持ったコーヒーのような香りがし、pHは6.18であった。
暗色物質はMSGとグルコースが室温でゆっくりと反応してできたメラノイジンであると考えられる。
放置液を分画分子量1,000の膜で透析し、透析内液と外液の紫外可視吸収スペクトルを調べた。
さらに透析内液を濃縮してエタノール沈殿を行い、沈殿と濾液の紫外可視吸収スペクトルを比較した。
(2)透析による分画
透析膜はSpectra/PorR Dialysis Membran, Pretreated RC Tubing MWCO 1KDである。
透析の経過を写真2に示した。
表1に透析前後のBrixのバランスを、表2に60℃乾燥固形分のバランスを示した。
Brixバランスは入と出が完全に一致し内液には6%が移行した。
乾燥固形分バランスは不明が15%あった。
原液の固形分が水分を含み、外液、内液の固形分は乾燥中に一部が分解、蒸発した可能性がある。
乾燥固形分のバランスでは内液に5%が移行した。
分子量1000を越える高分子(メラノイジン)は全固形分の5~6%であると言える。
透析前後の紫外吸収スペクトルを図1-1~図1-3に示す。
また相対吸光度を図2に比較した。
MSGとグルコースのメイラード反応では300nm付近にピークを持つ物質が生成するのが特徴である。 (第55節. MSGとグルコースのメイラード反応)
300nmのピークは透析内液が最も大きかった。
Total OD (OD*液量)のスペクトルを図3-1,図3-2に示した。
また透析内液と外液のTotal ODのバランスを図4に示した。
波長500nmで両者の比率は半々であるが、波長が短くなるにつれて透析外液の比率が高くなり220nmでは約90%が外液に移行した。
(3)エタノール沈殿による透析内液の分画
透析内液を写真3のようにホットプレートで濃縮した。
透析内液濃縮液10.5gに無水エタノールを添加して冷蔵庫(50℃)に2日間保存した。(写真4)
写真5に示すように沈殿と濾液に分離した。
次いで濾液をホットプレートで濃縮した。(写真6)
エタノール沈殿と濃縮濾液を1日風乾してエタノールを除去した。(写真7)
風乾物の重量比は沈殿:濾液=75%:25%であった。
風乾物を水に溶解して100mlにしたときの外観を写真8に示した。
風乾物水溶液の紫外可視吸収スペクトルを図5-1、図5-2に示す。
また風乾固形分を5mg/dlに換算したときのスペクトルを図6-1、図6-2に比較した。
300nmピークは濾液が高く、沈殿はピークからショルダーに減少していた。
図7は最高吸光度を示した191nmを100%としたときの相対吸光度である。
図8に沈殿と濾液のTotal ODのバランスを示す。
波長300nmより長波長では常に沈殿>濾液であり、600nmにおいて沈殿100%、濾液0%となる。
波長300nmより短波長では沈殿と濾液はほぼ50%である。
ただし250nm付近で沈殿60%、濾液40%となった。
(4)まとめ
MSG-グルコース反応液の色素は図9に示す如くおよそ80%が分子量1,000未満の低分子である。
高分子化したメラノイジンはエタノール沈殿画分に含まれると考えられるので、420nmで12%、300nmで7%となる。
大部分の色素は高分子化していないメラノイジン前駆体であると言えよう。